メイド本に間に合わなかったやつ
洗濯物

(和解後らぶらぶおせっ)



その日は珍しいほど、突き抜けた青が天上に広がっていた。
いっそ星の輝きさえ見える程透き通り、まるで水面のように雲が薄く広がる。
風に流される雲を眺めながら、飛ばされてしまわぬよう洗濯物にクリップを止めた。
パンパンと皺を伸ばすようにして、大方終わっている作業を少し中断する。

「みんなー、休憩にしよう」

たくさんのシーツの裏側から、はーいと声が聞こえた。
気候上、自動乾燥機が主流ではあるがこのように天気の良い日はお日様の香りのするシーツに包まれたい。
寝具をメインに、後は旦那様であるニールの普段着、それと各役職の制服、寮住まいの者はわざわざ部屋に戻って自分のシーツなども干し出したくらいだ。

「お疲れ様、みんな」

言い出しっぺはニールだ。
ブドウ畑の娘のように、タライに浸した洗濯物を……とまでは行かなかったが、バケツリレーのように洗濯物を外に運んで天日干し。
それなりの人員を用意するハメになったが、用意の良いことでお茶菓子をふんだんに準備させていた。
ティーセットも人数分あり、そして残ったメンバー達も厨房でお菓子にありついているのだろう。
想像に容易で、気概の良い彼の事なのでもう怒る気力も無かった。
お砂糖にクリーム、蜂蜜シロップ。甘いあまい午前のティータイム。
予定外の事をしやがって、などとは口が裂けても言えず、午後の来客用のケーキを確保しておかないと、今日のアフタヌーンティーは本当にお茶だけなんだから、とアレルヤは黙って意気込む。
小麦粉のストックはまだあるだろうか、とそこまで考えて、もう厨房に立たなくて良い事をはたと思い出す。
それに元々わが館のシェフのリヒテンダールは優秀だから、そんなうっかりなんてしないだろう。
……それがもしハウスメイドのクリスを喜ばせる為にやった事なら、もしかしたらあり得るかもしれない。
茶を啜りながらアレルヤは一人百面相になる。

わいわいと楽しい時間が過ぎる。
風は少々

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