可愛い君

『アレルヤ・カワイイ!』

その電子音は脈絡無くも、けたたましく部屋に響いた。
……最近俺の相棒は、何処からか変な言葉を覚えてくる。
日常の何気無い会話をまるで九官鳥のように覚え、そしてその意味を理解するまで脈絡無くその言葉を使うのだ。

『アレルヤカワイイ!カワイイ!』

デュナメスの整備を終えブリッジに転がりながら帰ってきた相棒は、突然そんな言葉を叫んだ。
いや、突然というのはおかしいかもしれない。
何故ならちゃんとその言葉の対象を認識してから、その言葉を叫んだのだから。
……ブリッジの扉を開けて、そこにいたアレルヤに飛び付いて受け止められてから。

「あらーハロ、どこでそんなの覚えたの?」
「最近、色んなハロが変な言葉を覚えてますよね〜。この間なんか?オレガガンダムダ!?ってころころ転がりながら……」
「それ、犯人明らかだと思うんスけど……」
「……刹那だな……」

どうやらその余波は、俺の相棒であるオレンジ色のハロ以外にも侵食しているらしい。
思わず頭を抱えた。
可愛い、と言われたアレルヤはどうすればいいのか解らない、といった様子で眉尻を下げている。

「こらハロ、その言葉は男に使うもんじゃないだろ」
『ロックン・イタイ!』

こつん、とその球体をグーで小突く。


「そうそう、アレルヤはどっちかっていうとかっこいいよ!」

クリスが否定する

「クリスさん、アレルヤは年下っすよ?!」

リヒティが

「私からしたら可愛いけどねえ、年下の男の子って」

「ミスが言うと冗談に聞こえないぞ……」

ラッセ

「あら、同性からしたらどうなの?アレルヤって」

「オレからすれば気のいい後輩、って感じだがな。年が離れてるし……同じマイスターとして、ロックオンはどうだ?」

「俺?んー……弟みたいだけど」

「ロックオンってばお兄ちゃんっぽいもんね!刹那とティエリアは手のかかる弟〜!」

「もう……ハロ、君のせいで注目の的だよ……」

困ったように

「悪いな、アレルヤ。後でちゃんと教えとくから」

「だって、ハロ」

『アレルヤ・カワイイ!』

「もー」

そう言いながらも、アレルヤは優しくハロを抱き締めた。
眉の形は依然困ったように下がっていたが、ほんのり頬は色付いて、何処か嬉しそうしていた。



「かわいい……んだよな……」

ハロの中にある辞書データを整理する為、おやっさんに借りた外付けの道具を接続しながら、ポツリと呟いてしまった。
そう、可愛いのだ。
どうしてか、アレルヤはかわいい。
とても素直ないい子だ。
わがまま一つ言わないし、こちらが言った事は真摯に受け止める。
だが芯の強い、確固とした意志も持ち合わせている。
『ロックン、アレルヤ、カワイイ?』
「……そうだな」
否定は出来なかった。
同じマイスター達は皆年下だ。
刹那もティエリアも可愛い弟のように感じるが、どちらかといえばそれは幼さによる可愛さなのだろうか。
いや、アレルヤも内面的にはまだ幼さを残していると思う。
ハロの言った言葉を否定せず受け入れていた。
突然的に話題に上がった事を恥じてはいたが、多分、可愛いという言葉自体は嫌ではなかったのだろうか。
『アレルヤカワイイ!』
「ハロ、あんまりそれは使うんじゃないぞ?女の子用だ、それは」
そう言葉で教えながらも、内臓されたデータに直接入力して書き換えた。女性用の褒め言葉、と付け足しておいた。


『アレルヤ・カワイイ!スキ!』

しかしその数日後、相棒はまたアレルヤを可愛いと称した。
しかもその言葉の後にはもっと凄い言葉が 付加されている。

「アハハ、ハロもかわいいよ。僕も君が好きさ」

……しかもアレルヤは、それをまた素直過ぎる程に受け入れていたのだ……。

「あ、アレルヤ?またハロが変な事言って……ごめんな?」

同じような事が繰り返されて、なんだか申し訳なくなってくる。

「別に構いませんよ?好きって言われて、嫌がる人なんていないですよ」

あーもー、この子は。
人類皆善人ですとでもいつか絶対言い出しそうだ。
何故疑わない。
いやAI相手に疑うも何もないだろうが。
それにキュリオスのマイスターとして選ばれたのだから、それなりに世界を憎んでる筈だ。
それなのにどうしてこの子は、こんなにも純真なのだろう。

「……ハロは?ロックオンのこと、スキ?」
『スキ!ハロ、ロックン・ダイスキ!』
「ですって。ハロはちゃーんと解ってますよ?」

はい、とハロを渡される。

「俺も大好きだぞ〜相棒!」

ぎゅ

『ロックン・アレルヤスキ!スキ!』
「えっ……」
「おわああっ!ハロ!なんてこと……ッッ」













「……にしても、誰がそんな言葉をハロに教えているんでしょうね?」
『ロックン!ロックン!』
「え?」
『アレルヤスキ!ロックンガイッタ!』
「ちょっハロ?!俺は言ってないぞ?!」
『イッタ!イッタ!アレルヤカワイイ!』
「いや確かにアレルヤは可愛いけどなあ!」

『イッタ!イッタ!』
「言ってない!」

怒って?でてく

「あっちょっとハロ!待ちやがれ!」
「……子供みたいですね」
「機嫌を損ねると、刹那より手が付けられないかもな……」

戻ってくる

「ハロ?なんだ、これ……」

コード

手持ちの端末とつなぐ→ひとりごとでつぶやいてる

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