ずっとあいしてる

捏造過多です。
刹那目線のニルアレ、刹ティエ。
性交渉の表現があるのでR18ですがぬるいです。
ティエリアが無性です注意!
刹那が男性、女性共に経験者であるというニッチさです。
ちょい刹アレ、ニルティエ、刹マリ、ニルフェル、ティエミレ、アレクリ表現があります
(「もし〜〜なら、〜〜だっただろう」レベルの表現ですが)







かつてそれを見た自分が思った事は、「これ程までに愚かな事があるのだろうか」だった。
愚かだとおもっていた。
実際に自分がその愚かな行為に巻き込まれてもなお、愚かだとおもっていたのだ。
神はこんな行為を許しはしない。
蛇のように絡み合う男と女、犬のように腰を振る男に自由を奪われる子供たち。
日干しレンガの匂いで喉が乾く。
薄汚れたたった一枚の木綿の布に抱かれる。
神がいるなら、こんな行為を許しはしなかっただろう。



「あ、あ、ぁ…」
刹那が廊下を歩いていると、小さくか細い声が何処からか聴こえた。聞き覚えのある声だった。甘く囀るその声が、粘度のある水音で阻まれる。
珍しい、と思っていた。
その声の持ち主は、とてもストイックで、多分、自分と同じように直接的な触れ合いを好まないと思っていた。ただ拒絶するしか術を持たない刹那と違い、その声の持ち主…アレルヤ・ハプティズムは、言葉で人を拒む。
だから男と女の関係などといった、そういうのには無関心だと思っていた。相手はアレルヤに熱を上げている、茶髪のオペレーターのクリスティナ・シエラかと刹那は勝手に判断を下す。煩わしいとさえ思った。この世に性が無ければ犯罪が激減するのに、動物は性が無いと繁殖が出来無いのだから。

ため息交じりに刹那は声の聴こえた方の部屋へ向かう。
そういう事に及ぶのであれば、人目につかないしかるべき所で及べ、と。
女に対する配慮など無い。女がいるから男は狂うのだと思っているから。一度異性を覚えた男は狂ったように股間をまさぐり、猿のような低脳な動物に成り下がるのだ。たとえその男がどれだけの武将者だとしても、女の裸体を前にすれば、ただの一兵卒だ。
だけど刹那は、扉をほんの少し開けただけで、その手足が止まってしまった。
確かにあれはアレルヤだった。
予想通りの茶髪が見えた。
だけど、あれは。
あの緩やかな巻き毛は。
「……ロックオン……」
アレルヤが名前を呼ぶ。
ロックオン。
ロックオン・ストラトス。
甘やかに二人は唇をついばむ。
裸体が絡み合う。
白と黒、茶と緑、脱ぎ散らかした二色のジーンズ。
神が許した行為は、男と女の、子を成す行為だけ。
刹那は何故か、今目の前に起きている狂乱の宴が、神に許されているものだと感じた。
今まで目にした、体験したどの性行為よりも、目の前の二人の男が正しく感じた。

叫びなど無い。
悲しみなど無い。
だって、刹那が体験したそれは、痛みを伴い、暴力を伴っていた。そして目の前で沢山の少女達が犯されるのも見ていた。まさしくそれは闇に捧ぐ儀式だったから。
少女達は、女になるか、そのまま羽化せずに死んで行った。女になっても、やがてその行為に疲れ果てて、或いは戦場に耐えきれず、死んで行った。
戦場で刹那は、男と女の醜さをずっと見ていた。
醜く愚かな行為だと思ったのだ。
刹那は思い出す。羽化が遅れた少女を。
それは刹那が初めて目にした女の裸体だった。
少女は、妊婦だった。
それは刹那が初めて体験した女性との性行為だった。
地域性だろうか、少女達は若くして嫁ぐのだ。そして嫁いだ先で神に許された行為に及んで、そして神に許された子を孕むのだ。
少女が神に許された行為で、神に許された子を孕んでいたかは今はもう知る術は無い。
だけど女は確かに少女だった。男を喜ばせる術も何も知らない無垢な聖母だった。

「あいしてる…」
愛がこの部屋には溢れていた。
ああ、神はきっと、愛があれば何もかも許してくれるのだろうか。
愛があるから人を殺していいのだろうか。
いいやきっと違う。この世に神はいない。だから愛があれば全て許されるなんて、そんな夢物語。
ある筈無いんだ。
「アレルヤ、あいしてる」
だけど目の前の二人には愛が満ち溢れている。
ロックオンの瞳がアレルヤを見詰めている。
アレルヤの片目が涙を流して嬉んでいる。
ゆっくりと、お互いを貪る行為が加速していく。全身で淫らに絡み合い、一心にお互いを求めあう。
嫌悪は、無かった。

刹那は扉を閉める。
忘れかけていた愛するという心を、アレルヤとロックオンによって掘り返される。
そして我が子と共に死んだ少女と、仇敵の国の姫を思い出した。
少女は何処となく、アレルヤに似ていた気がした。
アレルヤもまた、子供のまま何かを心の内に孕んでいる。
姫の肌は、灼熱の砂漠の国には似合わず白かったのを思い出す。
ロックオンの肌のように、姫の肌もあのように汗を滴らせるのかと思った。
宵闇に揺れる黒髪。白い肌。薄いサテンの濃紫色のドレス。
触れる事はない、高貴な人を。
一体誰が妻にと願い、抱くのだろう。



あれから何年経っただろう。
ロックオン・ストラトス…ニール・ディランディは死んだ。
アレルヤ・ハプティズムは見付から無い。
そんな中で、刹那には愛おしい人がついに出来てしまった。最初はニールの守った人を、守ろうと思った、それだけで。
ティエリア・アーデ。
無垢なイノベイド。
無垢で、純粋で、ニールに恋をしていたただの人間。
「おぞましい体だろう?」
滑り落ちる布を纏っていたその体は、細く、性を感じない姿だった。女のように膨らんだ柔らかな胸も、男が持つ欲望の塊すら無かった。
「男でも女でも無い、それでも君は僕を抱けるのか?」
白い肌に、僅かに人間である証がある。細い足を割り開けば、形としては女性のものと変わりは無い。だけどそこには悪魔の核も、子を成す為のものが無かった。
「それでもあいしているんだろう」
白いシーツに横たわる紫色の髪を撫でる。ああきっと、あの時。ニールはどんな気持ちだったのだろうか、きっとこんな気持ちだったのだろうか。
「ティエリア、俺はこれからお前を傷付ける。お前に俺を刻み付ける」
「……どうやって?」
方法はいくらでもあるんだ、と刹那は笑った。
愛おしい人に、自分を憶えていて欲しい。
たとえそれがどんな結末になったとしても、体で、声で、指先で。
全てを憶えていて欲しい。
たとえ愛おしい人が、誰かほかの人を愛していたとしても。
たとえ自分が愛おしい人を、心の底から愛せなかったとしても。
「刹那、刹那、せつ……」
ティエリアが名前を呼んでくれている。縋り付くように腕は首に回されていて、そしてあの時のように口付けた。
小鳥についばむ、この愛を。
ニールとアレルヤが思い出させてくれたんだ。
白い肌に残る、胸の突起を指で挟む。やはり女のように柔らかくは無かったけれど、きっと、多分アレルヤよりは柔らかいのでは無いのかと思う。
アレルヤには性があった。
だけどティエリアには性が無い。
でもそれでもティエリアは生きている。独りで、永遠に生きていくのだと思うと、心臓がぎゅっと締め付けられた。
永遠の存在、イノベイドとして、人間として生きる事を望んだ筈のティエリアは、生きていくのだ。
もし叶うのなら、ニールに聞いてみたい。
どうしてアレルヤだったのかと。
ティエリアでは駄目だったのかと。
自分でも駄目だったのかと。
慕ったいてくれた筈の、フェルトでは駄目だったのかと、訊ねたかった。
「せつな、誰か他の人のことをかんがえている?」
じとり、とその紅い瞳に睨まれる。嫉妬で眉を寄せるティエリアは、今は俺を求めていてくれていた。
性の無い体で、一心に俺を受け止めようと体をくねらせている。
「すまない、……こんな可愛いお前を、二度と誰にも見せたくないと思っていた」
「何なんだ、それは……っん、」
「誰にも見せてはダメだ、ティエリア」
独占欲だ。
もしきっと、あの時自分がニールに見付かっていたら。きっとニールはアレルヤを殺しただろう。
撃ち抜いて、切り刻んで、二度と誰の目にもつかない所に捨て去って。
そして独りで罪に怯えて、死んで行くんだ。
「ライルにも、ミレイナにも、ニールにも、誰にも、」
ああそうだ、ニールは、罪に怯えていたのか。罪に怯え、苦しんでいたのでは無いのだろうか。どうして気付いてやれなかったのだろう。それにアレルヤは気付いていた?アレルヤはニールを愛していた?ニールはアレルヤを愛していた?
今の自分なら、解る筈の答えなのに。
イノベイターになった、自分になら。
「俺はひとつ、お前に嘘をついている」
刹那は、ぽつりと声を零した。
「……アレルヤの事だ」
「アレルヤの?」
意味が分からない、といった表情でティエリアは刹那を見詰めた。
「ティエリア、お前は今、何を感じている?」
その赤く色付いた頬に、刹那は口づけを落とす。そしてゆっくりと体の重心を動かして、より深くティエリアと繋がろうとした。
「…っは、ぁ、く、苦し…」
「痛くはないか?気持ち悪くないか?」
刹那はティエリアの様子を伺うようにゆっくりと動き続ける。ティエリアには初めての経験にどうしたらよいか分からず、しかし快感を得る事も出来なかった。
そういう構造だから。
子供を作る必要の無いイノベイドには性器など必要無くて、そして性感帯などある筈が無かった。臍と、胸の淡い先だけが人間らしく残された部分だ。
「それとこれと、どういう関係が、ん…!」
刹那の激しい打ち付けにティエリアは必死に耐える。息も絶え絶えに、痛みも無く、ただ息が詰まりそうな程心臓が高鳴って苦しかった。激しいけれど、刹那はとても優しくティエリアに触れた。指先でまるで楽器を奏でるように、優しく。
「アレルヤは、……アレルヤが、こうしてニールを受け入れてるのを、俺は見たんだ」
贖罪の瞬間。
縋り付くように、或いは凍えた体を暖めるように。
二人は、ただそこで。
ひっそりと、人知れず。
睦み合っていた。
「………………ニールが……?」
本音を言えば、ティエリアの中にある、美しく清らかなニールの像を穢したかったのかもしれない。その白い肌に姫の肌を重ねた、あの瞬間から。
「アレルヤと?」
血の気の引いた、そんな表情だったと刹那は思った。
ティエリアの中にある偶像を壊す為には、痛くとも現実を突き付けなければならなかった。
だから、
「それでも……愛していられるか?」
あまりにもティエリアへの愛が大き過ぎて、受け止めきれずにいた。あまりにもティエリアの愛が純粋過ぎて、刹那には眩しかったのだ。
「ティエリア、俺はお前を、愛しているんだろう?」
自分の感情すら分からなくなる。
永遠を生きていくティエリアになら、解るのだろうか。
共に生きて行きたいという気持ちが湧かない。
ただ今が続けばいいのにと願ってしまう。
ティエリアの手を握った。神に祈るように指を組む。
「刹那……君は僕を愛してくれているんだろう?」
僕も君を愛している、とティエリアは甘い吐息と共に囁く。
ティエリアはふ、と笑った。
「同じように、ニールとアレルヤが愛していたなら、それは僕にとって辛いことでも、悲しい事でも無いさ」
きゅっと手のひらを握り返されて、刹那はついに動けなくなってしまう。まるで最初から知っていたかのように、ティエリアが微笑っていたのだから。
「僕は確かに、男でも女でも無い。だけど今こうして必死に君に抱かれて、心臓が脈打つんだ」
これ程までに幸せな事は無い、と一筋の涙が、ティエリアの薄紅色の頬を伝う。
「それなら、独りで生きるのも怖くは無い。君に愛された記憶を僕は忘れはしない。そして世界が一つになるのを、僕は見届けるんだ」
そしていつか僕が止まってしまった時に、それらを思い出して、幸せな気持ちで終われるんだ。

「刹那、忘れてしまったのか?あの時僕たちは、確かに二人に愛されて育ったんだよ」

ずっとあいしてる
あいしているから
わすれないでいて
ぼくたちのことを
ずっと愛していて



END



11/09/02 UP
11/09/04 改訂

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