ほんとうに?
ふたなりで妊娠します注意






<<飲酒・喫煙はご遠慮下さい>>

 喫煙は、まあ、しない。
たまたまジーパンに入っていたタバコを一本、拝借するレベルだ。
 飲酒は、しないと言ったら嘘になる。
だからと言って仕事中にも手放せないほどアルコール依存は無い。
適度に嗜むのが大人ってもんだと思っているぶんもあるが、酒で酔い痴れて誰にも知られない無意識の自分を曝け出すのが怖いのだ。
 その晩はポチーン…アイルランドの焼酎を飲んでいた。
たぶん。
多分、というのは、それが本当にポチーンだったという確証が持てないからだ。
 もし、このポチーンが、魔法の秘薬だったら…?
まだ、身体は酔ったままだった。

「あぁ、んんっ!」
 押さえ気味の矯正があがる。
女性というには少し低く、かといって男性というにはまだ高い声だ。
少年とも青年とも付かない、曖昧なテノール。
いやアルト?
今はそんな事はどうでもいい。
 魔法の秘薬は、一人で飲むには多い量だった。
それを二人で人知れず盃気を交わしたのだ。
ポチーンであれば、アルコール度数は50はある。
酷い奴だと、90だとか、そんなレベルのきっつい薬だ。
数世紀前までは密造酒だとか、どぶろくだとかで飲めない奴だったらしい。
らしい、というのは、あまりにも昔の話し過ぎるので知識として頭の中に入っていないのだ。
「うー、あっあっあっ!ロッ、ク、オン…っ」
 喘ぎは続く。
俺のコードネームと共に。
果てしなく訪れる快感に、目の前の青年は夢中になっていた。
青年の鍛上げられた胸は筋肉で、女のようにとはいかないが質のよいもので、柔らかくふにふにとしている。
そこに顔を埋めながら、下半身を掻き抱いた。
 腰は、細い。
きゅっと締まり、骨盤は…というより、締め付けるそこは、まるで女と同じ。
男性器は大きく膨れ上がり、ぶるんぶるんと律動に合わせて揺れて半透明の液を滴らせている。
 つまりはそう、あれだ。
トランスジェンダー。違う、インターセクシャル。
男性器と女性器を両方持つ、半陰陽者。
知識としては、記憶にある。
記憶の中の知識上では、それは、両方機能していないか、片方しか機能していないかのどちらかだった筈。
 だけど青年は、射精し、そして愛液で膣を濡らしていた。
それを知ったのは、酒を飲んでから。
まるでそれが魔法に掛かったように見えた。
「気持ちいい…?」
 吐息のように呟いた。
こんな事するなんて、日常的に、一般的にありえない。
想像すらした事も無い。
だってこの青年…アレルヤの事は、ふつうに男性だと思っていたから。
普通に。
「アッあぁん、ヤダ、また、出ちゃ…っあああっ!!!」
 ごりごりと、女とセックスするように子宮口を突き上げている感覚はあった。
かなりそこは狭い。
した事は無いけれど、多分、十代の少女の秘部のように、そこは狭く、とても小さいものだった。
だから俺のペニスを全部根元まで入れてしまったら、軽く下腹部が膨らんで見える。
全部入れるたび、そこの上で勃起しているアレルヤの性器は、ぴゅくぴゅくと軽く潮を吹くように射精した。
そして先程、三回目ぐらいのガチの射精。
勢いよく噴出したそれは、腫れあがったままの性器とはうらはらに量は少なめだ。
しかしとても濃厚なそれが、アレルヤの腹と俺の腹に掛かる。
「あーぁ、アレルヤ、またイッたのか」
 粗相をした子供のような視線で見詰められた。
雨の中震える子犬の瞳のようなそれは、庇護欲と、嗜虐心を同時にくすぐる。
「あっ、ごめんなさいぃ…っ!きもちよすぎて、ぼく、もう…ッ」
 過敏に反応するその肢体は、触れていてとても気持ちいいものだ。
ぎゅう、とその逞しい腕で頭を、肩を抱かれて、アレルヤは快感で甘く震える。
俺はまたポチーンを呷り、キスをした。
だらだらと半分は咥内から零れて、アレルヤの頬と首筋を伝い落ちる。
「ちゃんと気持ちいいなら、いい」
 まだ少し瓶の中に残ったポチーンをアレルヤの性器の先端から全部かけた。
ぎゅうぎゅうと締め付け続ける処女である部分の、追加のローション代わりだ。
あまりに狭すぎて律動を繰り返す度に、俺が中で出したものが隙間から溢れ出す。
「もう、ロックオン、止めようよぉ…!このままじゃぼく、ぼく…」
「”僕”、何?」
 アルコールが残る唇でまた口付けた。
(…たのしい)
 女とセックスするより、楽しかった。
初めて体験する時と同じような高揚感がある。
それが魔法の秘薬のせいか、ただたんにアレルヤが男性器も女性器も併せ持っているからなのかは解らない。
だけど嫌悪感は無かった。
むしろ今なら、絶対気持ち悪くて見れたもんじゃない勃起チンポだって舐められる。
 女性同士の性交を見るのが好きな男性は、潜在的にホモセクシャルだ、という論文をどこかで見た気がする。
「に、にんしんしちゃう…!」
「ほんとうに?」
 アレルヤが気を紛らわすように言った言葉は衝撃的ではあったけど、特にどうも思わない。
半陰陽者が妊娠だなんて聞いたことが無い。
だから中で出しまくった。
「わかんないけど、でも、こんなにおなかいっぱいだもん…」
 普段以上に幼い口調でしたったらずにアレルヤは話す。
そんなに出したつもりは無い。
だけどどことなく、アレルヤのしっかり割れた腹筋がある下腹部は膨らんでいるような気がした。
 ぐっと片足を持ち上げる。
より一層深く繋がれるように、その足を抱え込んで背中を丸めた。
ぐちゅぐちゅといやらしい音が結合部からする。
俺の精液と、アレルヤの愛液。
それと魔法の秘薬のポチーン。
 抱え込んだ方の腕とは違う方で、勃起し続けるアレルヤのチンポをこすった。
「ひィっ!アァ、やだ、ぜんぶ触って…!」
 腰だけカクカクと振って、カリの部分でGスポットを刺激する。
あるかどうかは知らないけど、感じているようなので、いい。
ついでに胸の上で真っ赤に染まった乳首に歯を立てた。
 なんて淫乱な身体だったんだろう。
これを知らずに俺は今まで寝食を共にして、生死を分かち合っていたのだ。
 一体どれだけの男が、この身体を味わったのだろう。
初めてにしては淫らすぎるその膣と子宮は愛液に濡れ、入り込んだ男根をきゅうきゅうと締め付けた。
 アレルヤの信じられない、といった表情がとてもいやらしく見えた。
「あー、駄目だ、これ…」
 自嘲気味に呟く。
多分これからはもう離れられない。
毎晩でも抱きたいくらい、アレルヤの身体からはもう淫猥な匂いしかしない。
どうせなら本当にこのまま孕んでしまえばいいのに。
俺の子供を。
「責任、取ってやるよ…っ」
 それは無責任な言葉だ。
無責任すぎて、それは信頼が無いと成り立たない。
でもアレルヤは、その声を聞いて、ぱっと一瞬驚いたような表情を見せた。
「…ほんとうに?」
 もうお互い全身ぐちゃぐちゃのどろどろにも関わらず、アレルヤのその表情はまるで恋する乙女のようで、俺はそれに瞬間見惚れる。
こんなに可愛らしい表情の出来る男だったろうか、こいつは…。
いやもうこの際男だとか女とか無関係だ。
嵌っていた。
このセックスに、このアレルヤという人間に。
「うん、だからもう…このまま俺の赤ちゃん孕んで、産んでくれよ」
「うれしい」
 そのまま、アレルヤは意識を飛ばした。
俺ももう幾度目かの射精と同時に、フェードアウト。

 記憶を辿ってみる。
どうしてセックスに至ったのか、全く覚えていない。
体躯だけなら、アレルヤは俺よりも幾分か男性的で、力もある筈なのに、何故抵抗しなかったのだろう。
記憶を何度辿っても、酒に口をつけた後から思い出せるのは既に俺に組み敷かれたアレルヤの卑猥な姿のみ。
股をかっぴらかれて、大きく勃起したペニスはとても印象的だった。
 どうしてアレルヤは俺を受け入れてくれたのか、それが不思議でならなかった。
いくら酒の力とはいえ、あんな…あんな、レイプもどきな事は。
同時に俺の中にある野性的で暴力的な部分の存在を改めて認識した。
「あー…、もう、カノジョにしてえ…」
 可愛すぎるのだ。
セックス中の反応がいちいち俺の癇に障る。
いい意味にも、悪い意味にも。
その表情、その仕草が。
 意識を飛ばしたまま眠ったベッドの上でアレルヤを抱き締めた。
下半身は繋がったままで、萎えたそれは少しでも体勢が変わったら、すぐにずるりと抜けてしまうだろう。
 無責任にも、恋人にしたいと思ってしまった。
当分は俺の腕の中で愛を囁いて、閉じ込めて、抱き締めたい。
だきしめて、抱きたい。
「彼女に、…恋人に…してくれるんですか…?」
 眠っていた筈のアレルヤが俺の独り言に対して言葉をかけた。
ぱっちりと開いた銀眼はまるで鏡のようだ。
「え、…むしろ、なってくれるのか?」
 それに素で答える。
特に興味も無く意識もして無かった同性の同僚が、一晩にして関係が全て一転したのだ。
魔法の秘薬のせい?
レイプまがいの事をして?
「あなたがそう望んでくれるのなら…僕は…」
 ずっと傍にいて、貴方を慕っています、と。
アレルヤの一世一代の告白だった。
「…いつから?」
 俺がアレルヤを望むよりも、アレルヤが俺を受け入れてくれたときはいつなのかと尋ねる。
いつから好きでいてくれたのかと。
いつから俺を支えようと思い始めたのかと。
「あなたが、僕の名前を呼んでくれた、その日から」
恋人のその笑みは史上最強にかっこよくて、そして凶悪に可愛らしかった。
だからこの微笑が一夜にして自分のものになったと思うと、今にも死ねそうなぐらい、幸せになってしまったのだ。

無責任なニールの言葉の結果は、もちろん、責任を取る事になった。
アレルヤの微笑は十月十日後、ニールだけのものでは無くなってしまったのだから。




11/03/07 UP

ごちゃまぜ部屋からサルベージ
取り敢えず妊娠発覚までの3、4ヶ月間毎晩ずっこんばっこんしてますねこのニールは

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