エスメラルダ(dj♀/jojo)
泡になるの番外
「ディオ、寒いのかい?」とジョナサンが呼びかけても、ドアの所で立ち尽くしたまま彼は動かなかった。凍てつく様な冬の夜だった。ジョナサンは子供は好きな方だが、12歳という微妙な年頃の子に対してどう接すればいいかたまに分からなくなる時があった。ディオは小学校では優秀な成績をおさめているが、友人を作るという事をしない。遊ぶ事もせず、授業が終わればすぐ屋敷に戻り一人で読書をしている。
彼はここに来る前、散々な目に合っている。貧民街に住む心無い大人達から暴力を受けたりしている。そういった凄惨な過去も関わっているのはジョナサンも知っていた。彼は不安に思っているのだ、この「新しい環境」が自分自身を受け入れてくれるのかどうかを。
ジョナサンは「焦った所でどうしようもない問題」だと結論付ける事にした。
優しい声音で名を呼ばれ、ディオは上目遣いでジョナサンを見た。ディオは同年代の子供に比べ細身で小柄な方だが、とても愛らしい顔をしていた。ジョナサンはそっと微笑んみ、掌でシーツの上をトントンと軽く叩いた。「一緒に眠ろう」という彼女なりのサインだった。
ディオは義父のジョージが大好きだ。だがこの家族の中では義姉のジョナサンが一番のお気に入りである。義姉の優しさに一時は戸惑ったが、ディオは控え目がちにベッドまで歩み寄った。
ベッドの中へ入り横になった時、ジョナサンの嫋やかな腕がディオの体を包み込んだ。厚みがあってとても柔らかい彼女の胸に顔を預ける形になって、ディオは自分の顔が熱くなっていくのを感じた。
「ふふ。ディオは温かいね、」
微睡む様にジョナサンは呟いた。ディオはジョナサンの顔を見て、死んだ母親の顔と重ねた。幼かった頃、母親にうだかれていた時の感触を思い出し泣きそうになる。ジョナサンのブルネットはあの頃の母親の髪と全く同じ色だった。
"おかあさん おかあさん おかあさん…"
ディオは幸せを感じ、やがて眠りにつく。