和パロジェノサイ♀その2

短い、サイタマ♀の過去の話



俺が身売りをしたのは十五の頃だ。ここへ来たばかりのジェノスと同じ位。

不況の煽りで困窮極まり、果ては一家離散というまあ、よくある理由だった。当時は伊納吹雪っていう派手な芸名の演者が人気で、若い女の子はみんな髪型とか真似してた。ほんとは俺もそういう青春を送りたかった。だめだったけど。

汚い蓙の上で客を誘って、揺さぶられながらはしたなくねだって、投げられた銭を必死になってかき集める。その繰り返し。男の体液にまみれた長い髪を川で洗ってる時は特に惨めだった。

一度ややも身籠ったが、勘の良い目付の婆さんに容赦なく手を突っ込まれた。あれは死ぬかと思った。涙もぼろぼろで、出血が止まらなくて、婆さんは「やっぱりね」と慣れたように、俺の中から出した小さなそれをどこかに持っていってしまった。

腹の痛みが落ち着いた頃、俺は廓から脱走した。

低級の廓だ、ずっといた所でいつか死ぬ。俺は版画に描かれた伊納吹雪みたいに器量よしじゃないし、あの人みたいに舞台の上で、立派な遊廓の太夫になって素敵な金持ちに身請けされるような、幸せな女にはなれる訳がなかった。

自前の足で走って走りまくって、何とか追いかけてくる男どもを巻いた頃には、知らない川の縁にいた。一頻り泣いてから、長かった髪を切り落とし必要としている者に売って、貰った小銭を持ってぼんやり歩いていたら、声をかけられた。

博士との出会いである。



博士は廓へ金を払い、俺を身請けした。大した額ではないが、俺が働いても到底届かない金額を簡単に出した。

博士は嫌な顔一つせず出血のひどい股の間を消毒し、温かい布団にくるんでくれた。とても暖かくて、一生会えないであろう家族のことを思い出して涙が出た。

俺はこの先この人に尽くそうと、過去の汚れを払うために髪を全部剃った。博士はてるてる坊主になった俺を見て吃驚していたが、けして怒ったりしなかった。

俺は博士の研究分野である機械工学について必死に勉強した。なかなか幅広い分野だっただけに、博士の元で学んでいく内にいつの間にか年は二十歳になり、毛根も死滅した。

それから一年後、ジェノスがうちに来た。





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