I hope you'll accept this.(he♀/鋼)
※恋人未満
「え…、頂いちゃっていいんですか?こんなに綺麗なのに」
「良いの良いの。このままだと萎れちゃうもの」
笑って答える花屋の女主人に、アルフォンスは逡巡していた。大束になったそれは、途方にくれてしまいそうな程重みがあった。
「あの娘がたまに店を手伝ってくれるの。そのお礼だと思ってくれればいいから」
「エドワードさんが?」
「うん」
/ / /
「ただいま」
アルフォンスが帰宅した頃には既に居候の姿があった。ソファに寝そべり書物を読み漁る見慣れた光景が彼の目に入る。居候は振り返らないまま「お帰り」と返事をした。
「エドワードさん、これ。グレイシアさんがね、お店手伝ってくれたお礼だって」
エドワードと呼ばれた居候は振り返った途端、呆気にとられた。
「うんわ……すっげー、」
感嘆の声を漏らし、エドワードはアルフォンスの元へ歩み寄る。普段は男性の様に強かな彼女の女性らしい一面に、アルフォンスは心の内で頬を紅潮させた。
「よ、良かったら貰って欲しい…と言ってました」
「! …いいのかな?こんなに沢山」
「花瓶に活けたらとても綺麗だと思いますよ」
花束を抱える彼女の頬は、ほんのりと赤い。
「……結構、嬉しいかも」
「今、何と?」
「何でもないよ。さっ、腹も減ったし飯にしようぜ」
大輪のユリ。それはエドワードにとって向こうの世界でも縁の強い花であり、お気に入りの花でもある。なかなか進展を見せない二人に業を煮やしたグレイシアが、アルフォンスが帰って来る時を見計らって用意してくれていた事にも、薄々気づいていた。
普通に渡してもつまらない。好きな人から渡された方が彼女も嬉しいだろう。グレイシアの施しに恥じらいを覚えつつも、エドワードは「嬉しい」という気持ちを抑えられそうに無かった。