Marmalade Sand of "Fragaria"(リヒ+アル*姉/鋼)
リヒとアルが双子で姉さんが苦労する話
俺が一歳になった頃、母さんは双子の男の子を出産した。
名前はアルフォンス。親父の意向で、何故か二人は同じ名前を共有する事になった。母さんは「きっとお姉ちゃんを守ってくれるいい子に育つわねぇ」と笑っていたらしい。両親は早くこの世を去ってしまい、残された俺と双子は寄り添う様にして育った。母親似の可愛らしい顔が二つ並んでいるのを見るたび、俺が守ってやらなくちゃと躍起になったもんだ。
双子はそんな俺に甘えながら、すくすくと育った。
15を過ぎた辺りから俺の背丈をゆうに超え、父親譲りの体格の良さが表れて来て――
「エドワード姉さん、ただいま戻りました」
「ああ、お帰り。早いな、珍しい」
「はい。あんまり遅いと、心配するかなと思って、今日は早めに切り上げて来ました」
先に戻ってきたのは、双子の兄の方だった。弟より淡いブロンドに、透き通るような青い目を持つ。性格は穏やかで生真面目。大学は科学技術専攻で、毎日研究に勤しんでいる。
「ただいま姉さん!」
次に勢い良く帰宅したのは弟の方。こっちは兄に比べ濃いブロンドの髪。弟も兄と同じ名大へ通う頭脳明晰さを持つが、如何せん女癖が悪く――これはどうやら父親の遺伝らしい――酒と香水を纏わせ帰って来るのはしょっちゅうである。
正直仕方ない所もある。はっきり言うと「この双子は見目が良い為、女性にモテる」のだから。
「サークルの女の子が強引に誘うから、仕方なく付き合ってたんだよー」
「だからって、こんな時間まで」
「心配しなくても大丈夫だよぉ、僕は姉さん一筋だもん!」
「わっ…こら、アル!」
抱きついてくる弟を引き剥がそうともがくが、体格差のせいでびくともしない。余談だが、俺は兄の方を「アルフォンス」、弟を「アル」と呼び分けている。
「やめてよ、アル。姉さんが困ってるだろ」
アルフォンスが眉を寄せてアルを剥がしにかかる。幼少の甘えん坊が嘘のような紳士っぷりに、姉ながら頬が赤く染まる。
「嫉妬してるの?」
「っ!」
「やっぱり図星じゃん。アルフォンス兄さん」
アルフォンスの真っ赤な顔を見て、俺は内心ため息をつく。そう、双子は女に不自由しない身でありながら、何故か姉である俺を性の対象として見ているのだ。それは幼少の頃までさかのぼるが、それはまた別の話にしておこう。
「姉さんは、僕と兄さんどっちが好きな訳」
「え、選べる訳ないだろ。どっちも俺の大事な兄弟だし…」
「ふぅん。じゃあ、こうしようか」
「僕と兄さん、どっちが姉さんを満足させられるか勝負しよう」
「なっ、アル!何を言って…」
「姉さんとシたかったんでしょ?こないだ見たよ。アルフォンス兄さんが、姉さんの名前呼びながら自分を慰めてるの」
それは本当なのか。と目をやれば、アルフォンスは拳を握り視線を斜め下にやっていた。
「まあ経験豊富な僕の方が勝算あるだろうけど、ね。どうする?」
「………上等だよ、」
アルフォンスは俯いたまま、低い声を更に低くさせ告げる。
「アル、お前にエドワード姉さんは渡さない。姉さんは僕が守る」
「そう来なくっちゃ。じゃあ姉さん、ベッド行こうか」
――この双子には、本当に苦労する。
双子二人に引き摺られる俺は、天国にいる父と母に思いを馳せる他ない。