共生(hd♀/鋼)
変な夢をみた。
真っ白な空間にいた。不思議な気持ちで歩いていると、大佐に出会った。
大佐、と呼ぶと大佐は微笑みながらこちらを眺めているだけだった。
やがて隣に中尉が現れ、大佐に寄り添った。とても幸せそうな眼で。どうやら、二人は結ばれていたようだ。
先を進むと、今度はヒューズ中佐に会った。ヒューズ中佐は奥さんのグレイシアさんと仲睦まじい様子だった。水を指すわけにもいかず、俺は横を通り越した。
色んな人と出会いながら、ようやくたどり着いた先は、大切な俺の弟。
「アル!」
名を呼ぶとアルは振り向いた。小さな唇がねえさんとつぶやく。それが愛しく思えて、俺は抱きしめようと近付いた。
でも、その隣にはウィンリィが立っていた。
ウィンリィがアルの腕にそっと手を回す。まるで夫婦みたいに。俺は立ち止まり、その光景を眺めるしかなかった。アルはウィンリィの顔を見て、優しげに目を細めている。
俺が立ち入る隙など、もう何処にもない。
(……幸せなら、良いんだ)
姉である自分は、弟の幸せを誰よりも思っているつもりだから。
(さよなら、アル。ウィンリィと幸せに…)
俺はまた歩き出した。
俺はようやく自分が独りである事に気付いた。
誰もが幸せでいる中、自分だけそうじゃない事に気付いてしまった。
突然、目の前に一輪の赤い花が現れ、俺は目を丸くする。顔を上げた瞬間、涙がじわりと浮かんだ。
「遅くなってごめんね」
そこにはアルフォンスが立っていたからだ。
強い風がなびき、まとめていた自分の髪が解ける。慌てて直そうとしたら、愛しい手がやんわりと制止した。
「このままの方が素敵ですよ」
その言葉に顔が熱くなる。アルフォンスは持っていた赤い花を俺の耳元にさし、告げた。
「僕と共に生きて下さい」
霧は瞬く間に晴れた。