Don't repeat the secret.(he♀/鋼)



僕とエドワードさんの出会いは一年前に遡る。
仲間達とロケット研究を深夜になるまで勤しみ続け、僕は偶然の土砂降りの中で帰路についていた。近道である裏路地を辿っていると、丸い大きな影が隅に蹲っているのを見つけた。

稲光で照らし出されたそれは明らかに人間だった。僕は慌てながらも、倒れている人を横抱きにし下宿先まで走った。


その人の体は冷たくて、水気の含んだ身体はぐったりとしたまま動かない。もしかすると死んでいるのではないかと――嫌な予感がしていたが、微かに呼吸する音がして、まだ間に合うと気付いた。

随分と幼い顔をしているので、おそらくは少年だと思いつつ、応急処置の為に僕は次々と衣類を脱がせていく。


ところが、白いシャツのボタンを全て外し左右に割り開くと、予想しなかったものが自分の目に飛び込んできた。そこには、幾重も巻いた晒しの上から主張している胸の膨らみ。


…お、女の子…?


初めての女性の裸体に、顔がみるみる内に真っ赤に染まる。だがそんな事は言ってられなくて、視界をずらしつつ何とか新しい服に着替えさせる事に成功した。冷えた体を毛布で包むと、十分後には虫の息から安らかな寝息へと変わって、僕はようやく胸を撫で下ろした。






「はい、チェックメイト」
「くそっ、また負けたか」

王を騎馬で倒されるのを見たエドワードさんは頭を乱暴に掻く。誰よりも腕っ節が強くて、男らしいエドワードさんが実は女性であるという事実は僕だけしか知らない。

「お前の攻め方って独特だし、たまにどう対処していいか分からねえよ」
「お褒めに預かり光栄です」

エドワードさんには僕と似た弟さんがいるらしい。だからか、関係が深まるにはそう時間はかからなかったみたい。

「弟さんも、チェス…得意なんですか」
「ああ、まあ…な」

弟さんの話をしている時の彼女は、どこか慈愛に満ちた眼差しをする。それが僕の目に美しく映った。

「エドワードさん」
「ん?」
「僕が勝った場合の約束、忘れてませんよね?」

僕は彼女の項に触れる。

「ああ、分かった」

エドワードさんは纏めていた髪を解き、男装から普通の女性に戻った。

「好きです、貴女を。僕を受け入れてくれますか」
「俺も…好き」

唇を重ねて、そのまま僕らはベッドに倒れ込んだ。


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