Amen.

V+N親子ねたでV♀D 特殊パラレル



父は骨董店を営んでいた為、界隈の奴らからは主人と呼ばれ親しまれていた。絵画の才もあり、アトリエを開き展示会を開く程の腕利きでもあった。


どちらかといえば仏頂面であることが多かった父だが、堅実な人柄もあり周囲から尊敬されていた。内心自慢の父でもあった。

自分がスクールから戻った直後、父は椅子に座ったまま冷たくなっていた。元々持病があった為仕様がなかった部分もあるが、突然の死にしばらく頭が真っ白になった。椅子の隣には小さな写真立てがあり、そこには何処となく父の面影がある女性の遺影が写っていた。

女性はまだ少女といってもいい。一度聞かせてくれた話を思い出す。彼は彼女の死をずっと引き摺っていた。





彼女は父の双子の妹だった。二人は幼い頃から馬が合わず、思春期を迎える頃には相容れない関係となってしまっていた。そんな中彼らの母が病床につき、遺言と同時に父にペンダントを授けた。尊敬する母からの最期の贈り物だった。この時ばかりは妹と一緒に母を看取ったという。

母親が天に旅立ってから数日たち、父はペンダントが無くなっている事に気づいた。我を忘れ探し回っていると、偶然妹が目の前を通った。妹の首元には母から譲り受けたペンダントが光っている。

それに気付いた父は当然激昂し、妹の胸倉を掴んで窓際まで追いつめた。非難や罵倒の言葉を浴びせ、抵抗する妹からペンダントを毟り取った。その時妹は体勢を崩してしまい、開け放たれていた窓から身を躍らせた。一瞬だった。

屋敷の3階から芝生に落ちた妹はぴくりとも動かない。全身から血の気が引いていくような感覚を覚えながら父は妹の元へ駆けつけるが、もう手遅れだった。


結局、母から貰ったペンダントは自分の引き出しの中に眠っており、おそらく妹は後から同じペンダントを貰っていたようだった。


優秀な大学を卒業し、未来を約束されていた父は自首しようとしても周囲に止められた。それから社会に出て出世しても、結婚してからも父の苦悩は続いた。






俺は遺品整理の為、父が遺したアトリエへ足を踏み入れた。生前は入る事ができなかった為、今回が初めてだ。

写真と全く同じ姿をした女性が笑っている絵が、壁に立てかけられている。きっと妹さんを描いたのだ。それも何枚も。しかし当時のままの姿だけでなく、大人びた姿を描いたものもあるし、きっと今頃生きていたら、という父の思いもあったのだろうか。

額縁にはまった一枚は、きっと一番最後に描かれたものだ。額縁の中の妹さんは壮年期と呼べる位成熟した大人の女性となっていた。まるで父と苦楽を共にした妻のように、穏和な笑みを浮かべている。



俺はその時思った。もしかすれば俺が見えていないだけで、彼女はずっと父の側にいたのではないか、と。




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