I want you to notice my feelings.

現代 3V+N+3D♀





俺と兄は母子家庭で育った。だが母親も重病にかかり幼い内にこの世を去ってしまい、15になる頃には既に働いていた。

兄とは幼い頃からあまり仲が良くなく、いつも喧嘩ばかりしていた記憶しかない。母親だけが唯一の味方だった。そんな母親も居なくなって、俺はようやく兄に縋る事を覚えた。兄は冷淡だが筋の通った事を言うので、今までの蟠りとかも少しずつだが薄れていった。


そんなある日、仕事場である孤児院で新しい子供が来た。子供は中学生位の男の子で、名前はネロといった。ネロは気難しい子供で、いつも一人でいた。俺は何度あしらわれてもめげず話しかけてる内に、いつしか親しい間柄となっていた。

その事で職員の先輩に褒められ、俺は嬉しい気持ちで家に帰った。兄は公務員をしていて、いつも俺より遅く帰ってくる。俺に対する態度は昔に比べ軟化していた。

「お帰りなさい。シチュー作ったから、早く食べよう」
「ああ」

慎ましくも幸せだった。唯一の肉親と仕事しながら、こうして生活できれば、俺は何も必要なんかないのだ。




「ダンテ!」
「お疲れ、ネロ。面接はどうだった?」
「採用してくれるって。はぁ…」
「おめでとう、良かったなあ」

ネロの後ろにいた女の子が気になって、俺は聞いてみた。

「この子は?」
「ああ…キリエは」

女の子は丁寧に会釈をして、ネロの隣に立った。純朴で可愛らしい人だった。

「恋人なんだ。就職したら、その……婚約するつもりでいる」

後ろ頭を掻きながらネロは言った。

「先生。あんたがいてくれて、ホントに良かったよ」





家に帰り、俺は孤児院から巣立ったネロの話を兄にした。兄は黙って聞いていたが、話を終えると静かに口を開いた。「大事な話がある」と。

「急な話で悪いが…、家を出る事になった」
「? どうして」
「職場の同僚と結婚する。お前はもう一人前だし、心配はしなくていいだろう。


…後を頼む」







一人になってしまったのだと自覚して、ようやく俺は泣いた。






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