いとしごと

あいしていますの続き
D♀視点




兄の葬式から一年後、他人同然の親戚から一人の子供を押しつけられた。子供の目元を見て、ああと何となく察した。

この先こいつを食わせていかなければならない事を考えると、先に逝ってしまった兄が憎らしく思えた。

頼る者などおらず、よく分からないまま母親代わりになった。


ネロは手のかかる赤ん坊だった。


「ああああああん」
「またかよ、もう…ちょっと待てって」

よく泣くのだ。
夜泣きは毎日の事だった。最初は奮闘していた俺も、日に日に疲れが増えた。

…死んだ兄貴の尻拭いをさせられてる気がして来て、辛くなった。


その晩も泣き声が鼓膜をつんざいた。

「頼む……静かにしてくれよ……」

何日眠れてないと思ってんだ。赤子は泣く事しかできないから、そんなのわかる訳ないけど。あーあ、近所の奴らからまた苦情が来る。

もう疲れたよ。殺しちまえば、楽になるのになあ。



俺はゆっくりと赤子の首に手をかけた。





ネロの泣き声が次第に止む。曇りのない眼で、俺を真っ直ぐ見つめてくる。

兄貴の幼い頃がオーバーラップして、俺は久々に泣いた。


ごめんなネロ。
俺はだめな母さんだ。

最後まで分かり合えなかった兄の代わりに、お前が来たのかも知れないなあ。







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