私が私でなくなっても
2N♀2D
ダンテが姿を消して一年。とっくに廃屋となっていた事務所からネロは捜索を始めた。長期に渡り情報を集め奔走し、ようやくそれらしいものを手に入れる事が出来た。
それは、既に沈没してもう存在しない筈のマレット島が復活していた事であった。
古城には魔界から溢れた悪魔共がわんさかと待ちかまえていた。それを蹴散らしながら進んで行くと、やがて魔界に繋がる扉に辿り着いた。
右手が強く光り始め、ネロはそこからダンテの気配を察知した。ダンテはすぐそこにいると確信した。
ネロは躊躇しなかった。
魔帝はネロを待ちかまえていた。美しい聖母を象った石像のような姿をした悪魔だった。ダンテの気配はさらに大きくなり、ネロは怯む事なくレッドクイーンを魔帝に向ける。
聖母の顔はたちまち歪み、口が裂け牙を剥き出しにする。背中からは八つの手が生え、ネロを襲った。
満身創痍ながら、ネロは魔人化を使いとうとう魔帝を追い詰めた時。
魔帝の心臓にあたる場所から、ボコリと何かが浮き上がってくる。その直後、ネロは瞠目した。
「――ダンテ」
心臓と一体化するように拘束された一人の女性。紛れもない、彼が探し求めていた人物だった。
「あんた、奴らに魂を…!」
ダンテは弱々しく答える。
「逃げろ、ネロ。」
ここにいてはいけない。人間界と魔界の均衡を保つにはこうするしかなかった。お前が来たらそれが崩壊しかねない。そう彼女は言った。
「帰ろう、ダンテ。もう一人にしないから。ずっと俺が守ってやるから…」
ダンテは小さく拒否した。
「もう、手遅れだ」
どうせ結ばれる事などありはしない。
聖母の心臓がダンテの肉体を取り込んでいく。完全なる魔帝となり果てていく愛しい女性の姿を、ネロは見ている事しか出来なかった。
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バッドエンドですね(・ω・`