My.prince
4N3D♀ 現代?
悲恋かつ死ネタ
ダンテとは遊びで付き合っていた。俺には婚約している女性がいる。だから、あくまでも一時の退屈しのぎでしかなかった。だが、いつしか俺は彼女にのめり込み本気になっていった。それだけ魅了する"何か"を持っていたのかも知れない。
ダンテは何もかも俺に尽くしてくれたし、どんな願いも聞いてくれた。辛く当たられても、暴力を振るわれても、ダンテは健気に愛想良く振る舞った。青あざの浮かぶ目元を撫でて謝罪の言葉を告げる俺にいつもこう返していた。「わたしはだいじょうぶだから」と。
ダンテは全てを包み込む聖母のような女だった。俺はダンテに、「お前となら一生を共にしてもいいかも知れない」と言った。その時の幸せそうな彼女の笑顔は、今も忘れていない。
だが、何も知らない婚約者の顔を見ていたら俺は急に罪の意識が芽生え、やがてそれは肥大していった。婚約者を裏切れるはずもなく、結局俺はダンテに別れの話を切り出した。自分に婚約者がいる事も全て、洗いざらい全て吐き出した。
ダンテは酷く傷付いた目で、
「何もかも嘘だったの?」
と呟いた。
それが鬱陶しく思えた俺は今までの事は全て遊びだったと吐き捨て、もう二度と会うことはないと添えてダンテの家を出た。
一週間空けてもう一度その家に上がると、二階の寝室で首を吊っている彼女の姿を見つけた。
開け放たれたテーブルの引き出しの中には妊娠検査薬が置かれてあり、陽性を意味する印がくっきりと浮き上がっていた。
最後に会った日に、ダンテは子供が出来た事を知らせるつもりでいたのかも知れない。
だが俺は拒んだ。
甘い言葉で彼女を騙し、振り回してきたのは俺なのに。
最低だった。
ダンテはそんな最低な男を信じ続けていたんだ。
俺は呆然として、立ち尽くした。