Alma redemptoris mater

Please look down~の続き。身体欠損表現あり
1V+子Nx♀1D




バージルがフォルトゥナにある託児所を訪れたのは実に一週間ぶりであった。赤子の内から託児所に預けている実の息子――ネロはもう今年で9歳になる。

訪れた際、二つ上のキリエという少女と丁度遊んでいる所だった。

「ネロ、お父さんよ。お父さんがきたよ!」

いち早くバージルの姿を見つけたキリエは、大きな声でネロを呼ぶ。それに気付いた少年は父親と全く同じ白髪の頭をこちらへ巡らせた途端、その顔は喜びに染まっていた。

「――父さん!」

一週間ぶりの父との再会に、息子のネロは飛び上がった。バージルは仕事上の都合により、ネロの養育については託児所に任せきりだ。それでも忙しい合間を縫い、こうして息子に会いに行く。ネロも幼いながらも父親の事情を薄々理解しており、父親がいない間はけして泣き言を零したりはしなかった。

「寂しかっただろう、すまなかった」
「平気。父さん、今日は大丈夫なの?お仕事…」
「今日は休みだ、父さんと一緒に出かけようか。今日は船に乗るぞ?」
「やったあ!」
「お前に会わせたい人もいる」

会わせたい人とは誰だろう?そんな事が脳裏に過る。しかし父親との休日に胸が躍るせいか、すぐに消えて無くなってしまった。



カエルラ港から船に乗り、外からは美しい海が望めた。それに興奮する息子をバージルは静かに見守っていた。父子の関係はかなり良好と言え、時折話を交えては笑いあったりしていた。

「そんなに船が好きか」
「うん。大きくなったらもっと遠くへ、行ってみたい」
「…そうか」

ネロは父親に憧れの念を抱いていた。ネロは託児所にいる同年代の子供達の中では一番小柄だ。だから、父の様に逞しい大人になるのが夢なのだ。




1時間半後に船は港へ到着した。途中から古びたボンネットバスに揺られ、ネロはフォルトゥナには無い自然の風景を堪能した。バスを降りた後、森林の続く道をしばらく歩くと、白い屋敷が見えてきた。

初めての光景に目を丸くする息子を尻目に、バージルは敷地内へ足を踏み入れた。ネロはまるで父親が王様であるかの様に錯覚した。



「…今戻った。ダンテ」

屋敷の二階まで上がった時だ。バージルの声に反応し姿を現したのは、自動式の車椅子に乗った一人の女性だった。自分と、父親と同じ白い髪をサイドに纏め、白いドレスを身に着けた女性は、手足が存在しなかった。ネロはそれを不思議に思った。

「お帰りなさい」

ダンテは淑やかな声で兄を迎えたが、やがて目線はネロへ移っていく。

「その子は…?」
「息子の、ネロだ」

ダンテはネロに顔を近づけ、花が咲く様な笑顔を向けた。

「初めまして?私はダンテ。バージルの、双子の妹よ」

その時、ネロは頬が熱くなるのを感じた。




* * *




「本当の母親かと思ったか」

珍しくからかいの含む父親の問いに、ネロは慌てて首を振った。

「父さんに似てた」
「…双子だから、な」
「あの人、手足が無かった。どうして?」

バージルは目線を落とした。

「生まれつきだ」
「うまれつき?」
「ああ」

――母の腹にいた時に、きっと俺が妹の分の養分を吸い過ぎたんだろう。




ネロは父親を介しダンテについて色々な事を知った。普通の人よりもあまり喋らない事や、屋敷の外へは一歩も出られない事など。

それでも構わず、ネロはダンテのいる部屋へ訪れた。ダンテは確かに口数が少ない上喋りもぎこちないが、遠方からやって来たネロを可愛がった。

「ネロ。私の事は、おばさん、でいいのよ」
「叔母さん、か。しっくり来ないなぁ…」
「そう、?」
「"ダンテ"じゃだめ?」

ネロの提案に、ダンテは喜んで了承した。

「もう、夕方ね」
「帰らなくちゃ。ねえ、また会いにきていい?ダンテ」
「いいよ。いつでも待っているから」



ネロは別れを惜しんだが、父親に急かされ屋敷を後にした。バージルは託児所へ連絡を入れた後、息子がカエルラ港行きの船に乗り込む所までを見送った。





屋敷に戻ると、彼はダンテのいる部屋に入る。そして彼女にある事を相談した。

「ネロが13になったら、この屋敷へ住まわせようと考えてるが。いいか?」
「そう、わかった」
「お前が気に入ったらしくてな。遊び相手にでもなってやると良い」




ダンテは窓を見ながら、ぽつりと呟いた。

「バージルによく、似てる。あの子」
「…やはり俺の血が、濃いか。道理で、お前によく懐く訳だ」

兄の言葉に、ダンテは笑った。








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