まげて、ひらいて。

嫌われ○子パロ D+他



自分に叔母がいたなんて初耳だった。つまり、親父の妹である。本当に?と聞き返すと、親父は滅多に動かさない眉にしわを寄せながら、ああと言った。

俺はその時丁度夏休暇だったので、一人でその親父の妹が"住んでいた家"に訪れ、遺物の整頓をする事にした。忙しい父の身を案じ、自分から率先してやったのだ。親父は「無理にやらなくてもいい」と渋い声で言ったが、どうせヒマだからと俺は答えた。



掃除の最中、一枚の写真を見つけ俺は手を止める。写真に写っているのは、俺や親父と同じプラチナブロンドの美女だった。白い家を背景に無邪気に笑っている写真の裏には、


 19xx年 Dante


と達筆な文字で記されている。俺はとりあえず、親父の携帯へ電話をかける事にした。




「もしもし父さん。さっき、写真見つけたんだ」
『どんな…?』
「裏面にダンテって書かれてある。これ、妹さんの名前か?」

親父は一寸置き、そうだと言った。暗い声で。

「へぇ、そうだったのか。想像したのより、随分良い人そう…
『アイツはそんな女ではない』

きっぱりと否定され、俺は何も言い返せなかった。

『勝手に家を出て置きながら、両親に迷惑ばかりかけて…挙句がこの様だ。いずれにしても、詰らん人生だった』

あの親父が随分な言い草だ。血の繋がった妹が死んだのに、何故そこまで邪険に扱えるのだろうか。こんなに綺麗に笑える人が、一体何をしたと言うのだろう。

なにゆえ、死んだのだろうか?

『悪い、ネロ。今は仕事で忙しくてな。切っても構わないか』
「あ…ごめん。分かったよ、それじゃ」

俺は通話を切り、写真をもう一度見た。





その時インターホンの音が耳に入り、俺は肩を揺らした。誰か来たのだ。玄関のドアをゆっくり開くと、そこには見知らぬ女が立っていた。

グラサンをかけた、黒髪ショートの妖艶な美女である。しかもミニスカスーツの出で立ちだ。

「あの、どちら様…でしょうか」

女は胸ポケットから名刺を出すと、俺に向けて投げた。それを上手くキャッチし見てみれば、細かな刺繍の施された高級紙である事に気付く。その上、社長という文字が飾られているではないか。――こんな人間がどうして此処に。

「ダンテの友人よ」
「友人…?」
「あんたは見たとこ、親戚か何か?」

赤いネイルで彩られた爪で顎を持ち上げられ、俺は内心焦る。ドキドキしてしまった。

「親戚、ですけど……最近知ったんです。だから、その、どんな人かってのは…あんまり……」
「――そう」

レディとシンプルに書かれた名。そのレディという女社長は深いため息をつくと、ある提案をした。

「教えてあげるわ。今から来なさい」






エアコンがガンガンに効いたVIP車の中で、レディは煙草を燻らせる。

「バージルは何て言ってた?」
「…親父、?」
「ダンテが死んだ事について」

――嘘をつく理由もないので、俺はそのままの事を口にした。親父が妹さんの事を「親不孝のアバズレ」と罵っていたのも全て。レディは、静かに最後まで聞いていた。

「あの…」
「何?」
「叔母さんって、悪い人だったのか?」

レディは笑い声を上げた。



「あの女が悪人と呼べるなら、あたしは差し詰め極悪人ってトコね。ま、世間じゃ悪人と呼ばれるのかも知れないけど。あの女とは刑務所で知り合ったの」

刑務所というワードを耳にし、やはり何かしらあったのだと悟る。親父があれだけキレていても仕方が無い。



「でも悪い女じゃ無かったわよ。彼女、初めは教師だったんだから」

…え?
教師?教師とは、学校の教師の事か?

「驚いてる?あいつは歌が好きでね、音楽の教師をやってたの。」






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力尽きた キャスティングは余裕でした


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