何れも高尚である

♀1D



「わぁ、きれーなどれすだぁ」

母と娘、二人きり。街に下り、ショーウィンドウの中で深紅のドレスを纏ったマネキンを見つけたダンテは感嘆の声を漏らす。

「そうねぇ、ダンテもいつか着れるわよ。きっと」
「ほんとぉ?いつ?」
「大きくなって、素敵な人に出会えればね」

ダンテの母は微笑みながら言う。赤いマネキンは、隣にいる男性のマネキンにエスコートされている。ダンテは大きくなった自分が素敵な男性に手を引かれる様を想像し、頬を赤くした。




滅多に吸わない煙草を灰皿の上で潰すと、ダンテは依頼の為に立ち上がる。久し振りの大物が引っ掛かったと上機嫌に鼻歌を歌い、赤い服に腕を通す。それは幼少の頃焦がれていたドレスではなく、もう悪魔の血を何度吸ったかすら分からない深紅のコートだった。もし自分の人生が幸せなものであったなら、両手にはブーケが存在していたかも知れないが、今両手で握るのは悪魔を屠る為の二丁の大型拳銃。

デビルハンターである己に、人としての幸せなど訪れないだろう。

(分かってはいたんだけど、ね)

それでも彼女は、歩みを止めるつもりなど無い。






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