逆夢であればいい

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眠りは昔から浅い。ほんの少しの物音を耳にするだけですぐ目が覚める。それは今回も同じだった。忽ち意識が覚醒してベッドから身体を起こせば、ネロが側に立っていた。

表情は暗くて分からないが、息が少し荒くなっているのに気付いた。とりあえず、ネロをベッドの上に座らせ子供に対するような仕草で優しく頭を撫でる。気が高ぶっている時は、こうしてやるとすぐ大人しくなるから今でも活用しているのだ。

「笑ってもいいぜ、別に」

落ち着いた頃、ネロが呟く様に言った。

「良い年して、あんたに添い寝して貰うなんてさ」
「…いいや。笑わない」

そう言うと、ネロはきつく私の体を抱きしめる。項に手を差し込むと、しっとりと汗ばんでいた。相当魘されたのだろうか。




「あんたが消えちまう夢を、見た」

掠れた声で紡いだ。

「段々、あんたの体が薄れていくんだ。仕舞には触れる事も出来なくなって、俺、どうすればいいか分からなくて、消えないでくれって叫ぶんだけど、あんたは困った様に笑ってるだけで、俺、…」
「ああ、」
「怖くなった」
「でも居るだろう」
「うん…。夢じゃないよな?」
「夢じゃないよ。ほら」

唇を重ねる。ネロは驚いて固まったが次第に腕を回し、何度も繰り返した。啄むような優しいキスを。

「…ン…、」
「……何処にも行かないでくれ、ダンテ」
「はぁ……ネロ、」

「ずっと此処にいるって、誓え。…頼む、から」
「行かない」
「本当だな?」
「ああ。ずっとお前の側に居る」








(――とうとう勘付かれてしまったか)

ネロに寝着の中を弄られながら、ダンテは思った。

(例え私が居なくなっても、地獄の果てまで探しに行きそうだけれど)







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