馬鹿げた行進
3V→D♀
意味不でも許せる方のみ
「俺、本当はあんたと一緒に生まれたくは無かった」
そう言いながら窓辺に佇む妹の顔が、どうなっているかは伺えない。夕陽に照らされたその体は、本来強靭である事は確かだが、何故だろう。
今だけは頼りなげに見えた。
「あんたと向かい合える事は嬉しいと思ってる。でも、」
そこで一旦切ると、ダンテは考えているのか少し俯いた。
だが、その先を聞いてはならないと、誰かが囁いている気がした。
夕闇に溶けるように、妹の姿はぼやけていく。まるで人間らしさが損なわれていくようで、悲しく、俺はかける言葉を必死に探した。
「……もう…もう疲れた、何もかも。
普通に生きていくことすら。
バージル。
この体は本来は、あんたの血や骨になるべきものだった。だから、持ち主のあんたに返さないと」
これ以上言うな、聞きたくもない。
距離を詰め、妹の肩を掴んで振り向かせる。
妹は、塔の上にいたあの頃の姿よりも年をとっていた。一瞬の魔法のようだ。いや、魔法が溶けたようにも思えた。
「だからもう、あんたも囚われる必要はない」
妹の左目は影を落とし、嗅いだことのない香水らしき香りがした。その中には、微かに悪魔の死骸のような匂いもあった。
「バージル………」
抱きすくめられ、優しく耳に口付けられる。唇の動きから何を喋っているのかも解った。
前を向いて生きたいと願うのは、誰とて同じだ。しかし決まって、お前だけがそこには居てくれない。
どうしてなのだろう。
母に似て、美しい心を持った妹。
次第に闇に食い尽くされていくのを、俺はただ黙って見ているしかない。
了