少年と少女の話

Nx♀3D(イメージ的に
やや特殊で童話チックです。







人間が住まう世界には、魔帝が差し向けたたくさんの悪魔たちが跋扈していました。悪魔たちは人間を殺したり、あるいは喰らい、人間界には存在しなかった病原菌を撒き散らしました。


多くの者が死んでゆく中、一人の男が悪魔に対抗すべく立ち上がりました。男もまた悪魔であり、本来は人間の敵である筈なのですが、男は他の悪魔とは違う考えを持っていました。人間は守るべき存在であると考えていたのです。男は自身の力をもって人間を襲い続ける悪魔たちを倒していきます。人間たちは彼を「救世主」と呼び、彼の死後もずっと「神」と崇められていました。



その救世主を神とする宗教を根底とした都市が存在します。そこに一人の少年がいました。少年は悪魔が放った病にかかっており、右腕が異形のものへと変わっていました。その為、大人から白い目で見られたり、同年代の子供からいじめを受けたりする事もありました。少年は一人でいる事が多くありました。



ある日、少年は一人で道を歩いていると、道端で座り込んでいる少女に出会いました。少年は黙って少女を背に負うと、少女は驚いたように「ありがとう」と礼を言いました。こうして目を見て礼を言われたのは初めてだった彼の心には、僅かな明かりが灯りました。

胸に下げた赤いペンダントの似合う、蒼の瞳が美しい女の子でした。彼女の屋敷の前に辿りつくと、少女は少年をその屋敷に招待しました。

初老の執事以外殆ど人のいない屋敷の中で、たくさんのお菓子に囲まれつつ、ふたりは話をしました。少女は外の世界をあまり知らないらしく、少年の話に興味津々に耳を傾けます。それ以降も何度か会い遊ぶようになり、いつしかふたりは友達のような存在になっていきました。





しかし、少年が15歳になって悪魔を狩る仕事を任されてからは、それもぱったりと止みました。悪魔は人間に成りすます事ができると判明してからは、更に人間たちの警戒も強くなっていきました。少年もまた、悪魔は滅ぶべき存在として認識していました。悪魔と戦う日々が続いていき、いつしか彼は教団のエースと呼ばれる程の実力者になりました。
どうして会いにこなくなったんだろう。ネロがこないから、さびしいな。あんまり我侭いったらだめだね。そのうちまたきてくれるかもしれない。
それから数年後、彼は一人の人間の女性と結ばれました。名はキリエ、両親と兄を悪魔に殺され天涯孤独の身となった可哀相な少女です。キリエは病におかされた彼の右腕に一度も臆する事はありませんでした。少年は彼女を心から愛し、この先ずっと守っていこうと誓いました。さびしい。さびしい。さびしい。会いたい。またお話がしたい。

教団からの命令で、少年はとある屋敷へ悪魔狩りに訪れました。古びた洋館でしたが、"此処には悪魔が住んでいる"との確かな情報が入っていました。少年と同行していた教団の者たちが合図を送った後火を投げ、その数十分後には屋敷は大きな炎に包まれました。ネロに会えた!嬉しいな。…でもどうして、剣を持っているのだろう?

立ち込める黒煙から飛び出して来た悪魔達を、少年は次々に剣で屠っていきます。しかし一瞬、一際目立つ大きな影を見逃さなかった彼は、すぐ様後を追いました。その悪魔は負傷していたのか逃げる力は残っておらず、決着は思った以上に早くつきました。少年の剣による突きが容赦なく悪魔の胸を貫通します。
痛い!

少年はいつも通りの要領で、悪魔が息をふきかえさないよう何度も剣を突き立てました。
痛い!痛い!痛い!痛いよネロ!どうして?何で?私とはもう友達じゃないの?あんなに遊んでくれたのに!


悪魔は抵抗を止め、次第に姿を変えていきます。問題はその次でした。
痛いよ、痛いよ、痛いよ、痛いよ…………
少年は瞠目しました。先程の醜くく禍々しかった悪魔が、若く美しい女性の姿へと変貌したからです。女性は光を失った蒼い瞳をそっと細め、静かに事切れました。胸に下げたペンダントを見て、昔一緒に遊んでいたあの少女であると分かった瞬間、少年は後悔の念に苛まれました。時間を戻す術などある筈もなく、真っ赤に染まったドレスを纏う少女の体を支えてあげる事しか出来ませんでした。

少女はずっと少年を待ち続け、ようやく会えたのが嬉しかったのでしょう、とても安らかな死に顔をしていました。



おわり


補足:反転すると…


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