美徳の不幸

スパーダ×23♀
パラレル特殊



赤い唇に木苺の実が触れたが、娘はそれを食むことはなく、引き結ぶように口をつぐむばかりだった。

何故そんなに不機嫌なのだろうか

父親であるスパーダはそう思いながら、困った笑みを浮かべ娘の側に体を寄せる。


「さっき見たの。嫌な夢……」
「はて、どんな?」
「父様がわたしとではなく、知らない女の人とベッドにいたの。」

裸で抱き合って。
女の髪は私と同じだけど、大人びた落ち着きのある顔立ちをしていた。肌は雪みたいに白くて、腰は細く括れているし、

ダンテはコルセットで盛り上がった自分の胸をじっと見つめてから、苦々しい表情で更に続けた。

「父様はやはり、胸の大きな女性がお好きなのですか」

さすがのスパーダもこの言葉には目を見張るしかない。

「ただの夢だよ」
「夢にしてはやけに鮮明だった。あれでは、まるで………父様がそう願っているみたいに思えて、いやだった」

絹のようなプラチナブロンドがスパーダの肩にかかり、芳しい香りを放つ。ダンテはまだ二十歳を迎えてすらいない、乙女盛りであった。

しかし彼女はただの娘ではなかった。


すっかり機嫌が斜めになった娘にスパーダはキスの雨を降らせる。やがて、睡魔が突然襲われたかのようにダンテは彼の胸の中へ収まった。

「疲れたならお眠り。ずっと抱いているよ」

ダンテは目を伏せると、眠りの淵につく。

すると、癖のない筈のプラチナの髪が緩やかにうねりを帯び始め、若く瑞々しい、丸みのあった体は次第に細くなっていく。その代わり、かなり高い位置にあったバストが大きく膨らみ、谷間がその豊満さを強調させた。

少女の姿から熟した女性の姿へ変貌したダンテは、一時の眠りから目を覚ました。

「おはよう"ダンテ"」
「妹は……?」
「眠っている」

スパーダはダンテの顎を持ち上げると、間をあけず唇を重ねた。角度を変えながら堪能した後、彼女の浮かない顔にようやく気付いた。

「どうして…」
「?」
「どうして同じ体なんだ………」

肉体がそれぞれあれば、可愛い"妹たち"と共に過ごせるのにと、白磁の目元を赤く染めてダンテは俯いた。

「悲しい顔をしないでくれ。みな全てお前であり、一つだ。それは特別であり、素晴らしいことなんだ」

一つであるからこそ、己と妹たちは元気に暮らせている。一つの魂を分かつことなど誰もできない。


スパーダが以前、最も幼いダンテに贈った花冠も、実は彼女が丹念に作り上げた末妹への贈り物だった。

彼女は今でも、肉体を得た妹たちと共に笑い合っている夢を見る。






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