陥落
ファントム初代♀
R-15、初代ほだされちゃうので注意
マレット島で俺と派手にやり合った魔帝の腹心は消滅したかと思いきや、人の姿となって再び目の前に現れた。
それは、依頼の最中に雑魚どもから分の悪い戦いを強いられていた時だった。最初は誰か分からなくて呆然としていたが、聞き覚えのある声や地面から自在にマグマを発生させる様を見て、まさかと、嫌な予感を抱いた。
その悪い予感は見事に的中した。男は静かに振り向きながら告げる。
「地獄から舞い戻ってやったぞ、小娘」
「力を貸す、だと?」
かつての敵に助けられた上、負傷していた片腕の手当てまで受けてしまい、俺は複雑な様相で奴に聞き返す。
「貴様との戦いで魔力を大幅に削られた。今の俺は、魔界では即刻淘汰される下級悪魔とさして変わらん。
だから人間界に居すわらせて貰おうとな。
人間界についてはあまりよく分からん。だから貴様の所に来たわけだ」
「信用できねえな。お前のような上級悪魔は、雑魚を殺して魔力を蓄えてから、どうせまた……」
「まあ聞け、小娘。もう俺はあの時のように、膨大な魔力を持てない。貴様に徹底的に叩きのめされたお蔭でな」
ファントムの無機質なそれが諦めに近いような、何とも言えない表情に変わる。
「長らく闘争の中で生き、それが当然だと信じていたがな……」
ここに出迎えたばかりのトリッシュと重なり、俺は口をつぐんだ。
「今誓ってやる。貴様の言うことには何でも従うし、何だってやる」
「本気かよ、お前……」
ファントムの頑強な腕が俺の腰に回ってくる。
「悪魔の癖に笑える話だが、貴様には心底惚れているからな……」
唇が触れあいそうな距離で告げられ、たまらず顔を背ける。顔が熱い。
「その様子では、誰も受け入れた事がないように見える」
「………」
「抵抗しないのか」
「………」
「なら通じあっている、という事でいいんだな」
顎を取られ、端正な顔が近付いてきた時にはもう遅かった。唇を奪われ、更に強く固定され身動きがとれない。
唇が離れても、それは続いた。
「ずっと、こうしたかった」
「いつから……」
「貴様に倒され、虫の息だった時からだな」
「イカれてる」
「貴様がそうさせたんだ」
ファントムは意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「美味そうな顔だ。
今すぐ抱いて、俺の女(もの)にしてやりたい」
ズボン越しに尻を揉まれ、逞しい胸板が女の体を確かめるみたいに、俺の胸を押し潰してくる。
しばらく誰も相手にしていなかった体の奥が、こいつを求めているのが分かった。
俺はたまらず吐息を溢し、力ない動作でこいつの首に腕を回した。