天使

モブ男と2様♀ R15



例の呪われた屋敷の周辺では、若い女が何人も行方不明になっている。恐らく悪魔の仕業によるものであるから、行って始末して欲しい。

ダンテは依頼主の指定した場所へ足を踏み入れるが、そこは如何にも悪魔の存在を示すかのような、歪んだ空間が広がっていた。かつて名のある宮廷画家が住んでいた屋敷らしいが、文字通り呪われているらしかった。

三階の部屋のドアを開けると、人間のいない筈の真ん中に椅子があり、誰かが座っている。

壁際に立てかけられた絵は、みな裸婦ばかりだった。美しい容貌をした女性たちが、なだらかな裸体を晒している。中には、行方不明である女性たちの姿もあった。

ダンテは銃口を向け、相手の出方を伺った。



「私を殺しに来たのか」

声からして初老の男だろうか。

「女の肉を喰らう悪魔というのは、お前か」

ダンテは無機質に言い放つ。

「……死ぬのが怖くなった。だから悪魔に魂を売って以後は、女の血肉を貪り生き長らえてきた」

初老の男は静かに答えた。元が人間だった事に内心厄介だとダンテは縁で考えた。

「悪魔狩人を前に抵抗した所で、殺されるのは目に見えている………死ぬ前に、一つだけ願いを聞いてくれないか」

瞳の色からして、危害を加えるつもりはないようだ。ダンテは銃を下ろし続きを促す。

「まさか、今まで見た、どの女よりも美しい女が殺しに来るとは思わなかった。

どうか描かせてはくれないか。これで、最後にしよう」




ダンテは男の要望通り、一糸纏わぬ姿になると、アンティークのソファに横になった。指示通りに片足を折り曲げると、熟れ切った局部が露わになった。

月明かりに照らされたなだらかな曲線が青白く光る。男は夢中で筆を動かしている。それは血肉を貪った悪魔とは程遠い、人間味溢れる姿をしていた。



時間が経って男はようやく筆を置いた。

「もう思い残す事はない。」

ダンテはソファから立ち上がると、アイボリーを手にし男に歩み寄る。男の目には涙が浮かんでいた。

柔らかな身体に抱き締められ、男は感極まった声を上げた。

「まるで、天使だ」

アイボリーから放たれた銃弾が男の急所を貫いた。







衣類を手早く身に付けた彼女は、残されたキャンバスを静かに覗いた。

キャンバスの中では白い羽を休めた天使が横になり、妖艶にこちらを見つめている。自分と全く同じ姿をした偽りの存在に、ダンテは皮肉めいた笑みを零した。



この後、屋敷は炎に包まれ、何一つ残らず灰に還ったと伝えられている。





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