"愛の寓意"
3兄貴と病み初代♀ R18
よしんば生きていたとして、あの頃と全く一緒だなんて可笑しな話だと奴は言った。
何が要因かも分からない。飛ばされた、といった方が正しいのか。この世界にいるあいつは年をとった姿で俺の目の前に現れた。傷を負った俺の姿を見るなり、目の色を変えて肩まで貸してきた上、わざわざテリトリーに運び込んでくれた。
何とか手放さずにいた閻魔刀をちらりと一瞥するが、その時の俺には、こいつの首を狙う余力は残っていなかった。
「…シャワー貸してやろうか?」
――全く以て、訳が分からん。
答える代わり、悪魔の体液で滑りを帯びたコートを力任せに脱ぎ捨ててやる。平衡感覚は戻らず、ふらつくばかりだ。
「おい」
身体を支えようとダンテが腕を伸ばしてくるが、はっきりと拒んでやった。
「あんた、意外とずぼらなとこあるんだな…」
シャワーを浴び終えソファに座っていると、甲斐甲斐しくも愚妹は俺の頭をタオルで拭き始めた。
「構うな」
「良いからじっとしてろ」
ぴしゃりと言い退けられた。普段の姿で言われたら殴っていた所だが、年上らしい気迫に圧されてどうにも言い返せなかった。
到底同じ人間とは思えない気品のある匂いがしたが、
それでもその身の内に宿る魂は、全く同じものであると本能で理解した。
「抵抗しないんだな」
「………」
「こうしてると、子供(ガキ)の頃を思い出す」
あの時のように甲高くはなく、低く落ち着いた声。俺がこの世から居なくなって、かなりの時間が流れているのだろう。ダンテは俺の隣に腰を下ろすと、タオルを被ったままの俺の顔に手を差し込んできた。
「バージル。あんたの顔を、よく見せてくれ」
ダンテは泣いていた。涙を零している訳ではないが、哀切極まったような顔をしていた。存在を確かめるように、鼻や唇を指でなぞられる。不思議と不快な気持ちにはならなかった。何故かは、分からない。
次第にダンテは自らの体を預けるように凭れかかってくる。この女は声も、肉体も、顔立ちも、何もかもあどけなさを失っていて、官能的だった。
俺は邪魔になっていたタオルを剥ぎ取って、その赤い唇を塞いだ。
それからは単純だった。ソファに体を沈め、奪い取るように、舌も唾液すらも激しく蹂躙した。
「んふ……は、ァ、……」
ズボン越しに勃起したものを、知らしめる様にダンテの下腹部へと押し付けてやった。
「したい?」
答えるまでもないと思い、無言で見つめ返した。ダンテは幸せの頂点に立ったような、恍惚とした表情を浮かべ、静かにこう告げた。
「そうか……俺はあんたになら、殺されてもいい」