ホワイトチャペル
VLとarkam×♀D
特殊
ダンテは明日家を出るために荷物を纏めていた。同居していた兄の元へと、ある女性が嫁いでくるからだ。
兄の妻となる女性が、家に留まらないかと提案してきたが、夫婦水入らずを邪魔するのは野暮だと考えた彼女は丁重に断った。兄とは特別深い絆がある訳でもないし、一人で食べていく分には困らない程度の稼ぎだってある。それに、一人の方が気楽だと彼女は思った。
ダンテは孕めない体だった。子を産めない女が嫁ぐのは難しい時代であった為、彼女は生涯独り身である事を覚悟して生活していた。
一人暮らしをしている最中、ある男が彼女を訪ねてきた。男はアーカムと名乗り、顔を見た途端にダンテは仰天した。アーカムは、兄のバージルと結婚した女性、メアリの父親だったからだ。
娘が世話になっている、その礼を言いに来たとアーカムは言った。娘から話を聞いたらしく、家から追い出してしまう形になってしまった事を申し訳なく思っている様子だった。
アーカムを中へ通し、ダンテは多くの話を聞いた。メアリの母は病気で亡くなり、ずっと父子だけで生活してきたこと。紆余曲折あったが、娘を無事見送る事ができたことに嬉しいと思っていること。
話を聞く内、ダンテは純粋に彼ら親子を尊敬した。
両親は既に亡くなっている。兄はようやく親孝行らしいことができたが、それに比べ己は子を宿せず、どこに嫁げもしない役立たずだ。
ダンテはアーカムへ冗談混じりに伝えると、彼は強く否定した。彼女の手をそっと握ると、俯きがちに彼はこう言った。
突然で許して欲しい。もし、もしも。妻を亡くした身の上であるこの私で良ければ、共にあの家に住んではくれないだろうか。あなたはとても芯の強い、美しい女性と思っていた。と。
それはプロポーズだった。
ダンテはアーカムからのプロポーズを了承し、晴れて二人は夫婦の仲となった。
二人は穏やかに、仲睦まじく暮らしたとされる。
了