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 幼い生徒にとっては恐怖の的、背景には常時般若が浮かぶ。しかし、実は優しい先生なのであるというギャップに萌えることが出来るのは、心が読めるアリスの子かチートに塗れる私だけだろう。
 とはいえ、完全に畏怖を取り除くというのは無理なわけで、着実に『お関わりになりたくない先生』というレッテルが張られている彼は―――私の前に何とも無様な姿を晒していた。
 
「あの……神野先生」

「………」

 ジンジンこと雷のアリス神野先生。――が、何故かゴミ箱を被って佇んでいた。
 運は何とも悪い事に、周囲には私以外に誰も居ない。
 ヤバイ、詰んだ。

「……あの、どうなさったんですか」

「……何でも無い」

 殺意とか憤怒とかが入り混じった声音で呟かれ、びくりと肩が震える。
 どうしよう、本気で泣きそうだ。
 けれど何とか涙腺を堪えつつ、流石に「あ、そうですか……」と退散するワケにもいかないので、そそくさと近寄りゴミ箱を掴んで引っこ抜く。
 あ、これゲロを撒くゴミ箱じゃん。
 いつぞや、佐倉さんが掃除やらされてたなあ、と哀愁にふけっていると、そのゴミ箱は私の手から離れ、ぴょんぴょんと飛んで行ってしまった。
 うん、完全に怖がってるな。

 気を取り直して神野先生の方を向くと、持っていたハンカチで痛いほど顔を擦っている姿が見えた。顔はゴミだらけで何とも悲惨な姿だ。
 引き攣る笑顔のまま周りを見渡し、やはり誰も居ないことを再認識すると、持っていたテッシュとハンカチを差し出す。

「あの、これ使ってください」

「いや……構わん。汚れるだろう」

「いいえ、気になさらないでください。ハンカチならまだ持ってますし、そのハンカチだけでしたら足りないでしょう」

「……すまない」
 
 負けじとそれらを突き出すと、罪悪感を滲ませたような声音で神野先生は受け取った。
 米神を引き攣らせつつ顔を丁寧に拭いていく神野先生を見つつ私は、もしや地雷か、と案じるものの、気になったら聞きたくなるのが性というもので、恐々と口に出してみせた。

「あの、それでゴミ箱は何で、」

「敢えて言うならば事故だ。……ただ」

「え?」

 苦虫を噛み潰したような表情で言う神野先生は、一瞬口を噤む。だが、やがて忌々しげに虚空を見つめた。

「占いのアリスの生徒に言われてな。……『先生は今日一年で最も運が悪い日だよ!』……とな」

「……それは、何と言うか、」

 ご愁傷様です、という慰めにもなっていない言葉が掠れるように消えた。
 どうしよう、ものすごく気まずい。
 神野先生にとっても、誰が悪いとかが無い所為で、有り余る怒りをどこにぶつけたらよいのか分からないのだろう。相手が『運』なら、怒りのぶつけようがない。
 かといって、下手なアドバイスも今の神野先生には火に油を注ぐようなもので。
 さっさ拭き終えた神野先生はちらりと私を見降ろすと、疲れたように言った。

「……世話を掛けたな、ハンカチはまた後日洗って返そう」

「いいえ……、というか、その、くれぐれも頭上と背後には気を付けて……」

「……ああ」

 どもる私の言葉に小さく頷き、踵を返して去っていく神野先生からは、ゴミ臭が漂い続けていた。


(――噂にならないといいけど)


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またもやユサ様からいただいてしまいました! 二枚! キタコレ!!!
こちらも「ほぉぁああああっ!?」となってしまいました!! デジタル!! なんてふつくしいんでしょう!! 夢主の美人さんめ!←
そして夢主がダブルだということも知っていらっしゃってくださったとは……! 実は番外編でやっちゃってたりしてたんですけれども、見てくださっていたのですね……わあああ嬉しい……!!
二枚もありがとうございました!! ニヤニヤしながら眺めさせていただきます!
本当にありがとうございました!!!
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