※現パロ


ふわふわの金髪が風に揺れる。綿毛みたいに飛んでいきそうだな、と柄にもなくポエミーなことを考えてしまった。遠くから歩いてくるサボを見てそう思ったのだ。大きく手を振って買ってきた飲み物を私に見えるように高く上げる。あ、頼んでたやつじゃない。そう思ってスッと立ち上がるとごめんとでも言いたそうに困った表情を浮かべていた。うーん、まあ無かったなら仕方ないかな。


「ごめんな、頼まれてたヤツちょうど売り切れちゃって」
「いいよ、仕方ないし。買ってきてくれてありがと」
「おー」


2人でまた腰をかけてボーッと海を見つめる。私とサボは早朝の海を見に来ている。しばらくしたらぞろぞろと人が増えてくるに違いない。夏真っ只中だからね。現に私達以外にも人がチラホラといる。2人で海に行こうとなったのも急な話だった。私が何だか海に行きたいね、と言ったらサボがバイクを出してくれたのだ。地元の海はあまり綺麗ではないから、ちょっと離れた海へと向かった。その間くだらない話しをして、クスクスと笑いあって、海が見えてくると2人して海だー!なんて声を張り上げてみたり。

潮風が心地いい朝。買ってきてくれた飲み物はオレンジジュースだった。サボはミルクティー飲んでいる。


「あ、いいな。私も飲みたいミルクティー」
「言うと思った。ほら」
「わーい」


サボからミルクティーを受け取ってぐっ、と飲む。おい飲みすぎだとどつかれて自分の飲み物をこぼしてしまった。抗議の目をサボに向けるとはあと息を吐いてミルクティー全部飲んでいいよと言った。それは流石に悪い気がしたから返しておいた。


「今年もさ、海これるかなあ」
「今海来てるだろ」
「違うよ、そういう意味じゃなくて。普通に海に遊びに来れるかなって」
「…どうだろうなァ」
「エースとルフィとさ、4人で」
「来れるさ。なんなら家帰ったら聞いてみりゃいいじゃねェか」
「うーん。そうだなあ。でも2人とも忙しいだろうし」
「何を今更あいつらに気を使ってるんだか」


それもそうなんだけどね、と言えばぐしゃりと頭を撫でられた。エースもルフィも、誘えばきっと来てくれるのに違いないのは分かってる。でも彼女の出来てしまった2人をそう簡単に誘うことは出来ないんだよなあ、サボはそのことちゃんと分かってるのだろうか。チラリと横目で見ればサボはボーッと海を見ていた。朝日でキラキラ、キラキラと光る金髪。綺麗だなあ、いいなあサボの髪の毛は。キラキラと輝く金髪をじーっと見ていたら視線に気がついたサボがこっちを見て首を傾げた。金髪に見え隠れするサボの顔の傷が視界に入った。何度見てもこの傷は痛そうだなと思ってしまう。傷を見られてると分かったサボはフッ、と視線を逸らした。それに合わせて金髪が揺れる。


「サボはさぁ、どうして髪の毛伸ばしたの?」
「…なんで?」
「ん、いや何となく。小さい頃いがぐり坊主だったでしょ?その印象が強くてさ」
「いがぐり坊主って何だよ、お前だってちんちくりんだったくせに」
「いいの私は。今は立派なレディなんだから」
「ふっ、そうだな、レディレディ」
「バカにしてるでしょ」


鼻で笑って小馬鹿にするような目で私を見てくるからぐい、とほっぺを引っ張った。ルフィに比べるとそうでもないけど、サボのほっぺもよく伸びる。


「コアラさんのために伸ばしたの?」
「何でコアラが出てくるんだよ?」
「ん、だってほら、2人とも仲良いし…そういう関係にいずれかはなるんじゃないのかなって」
「コアラとはそんなんじゃねェよ」
「じゃあ何で?コアラさんにかっこよく思われたいから伸ばしたとしか考えられないんだけど」
「んー…」


一唸りしてから小難しそうな表情を浮かべる。そんなに言い難いことなのだろうか?サボを覗き込んでみると前髪をとかして目にかぶせていた。これ、サボが困ったときにする仕草だ。目が合うとサボは困ったように笑っていた。


「…ほら、顔の傷。あるだろ?」
「え、……うん」
「これ隠すため、かな」
「………」
「あんまいい傷じゃねェし、」


そういうとサボはまた海の方へと視線を向けた。
初めて聞いた。そのためだったのか。どことなくさみしそうな、かなしそうな顔をするサボを見てチクリと胸が痛んだ。まだサボは前髪をとかしている。困らせてしまった。流れる沈黙に私はどうすることも出来ず、ただただ自分の放った言葉を後悔していた。

太陽がぎらりと輝きはじめた。あまりもの眩しさに思わず顔を伏せるとサボはそろそろ帰るか、と口を開いた。久しぶりに聞いたような感覚に陥る。続いた沈黙はそんなに長いものではなかった、はず。いや長かったかもしれない。立ち上がって私を見つめるサボをじっ、とまた見つめる。潮風にふわり、ふわりと揺れるサボのその金髪は赤黒い傷を覆い隠していた。


「…name?」
「あのさ、サボはその傷よく思ってないかもしれないけど、私は…好きって言ったらなんか違うけど、でも嫌じゃないよ」
「……」
「だからさ、こう、なんていうか…」
「name」


名前を呼ばれ顔を上げるとぎゅ、とサボに力強く抱き締められていた。どうしてだろうか。この時は大きいサボが今にも消えてしまいそうなくらいちっぽけで、とても小さく感じた。そんなサボが消えないように、私も背中に腕を回して抱きしめ返した。サボは小さく「ありがと、ありがと」と繰り返し呟くように言った。


「お礼なんて言われるようなこと言ってないし、私はどんなサボでも好きなことには変わりないよ」


少ししゃがむように促して距離が近くなったサボの顔に手を添えて瞼にそっとキスをする。私のキスで、少しでも痛みが引きますように。この痕が消えてくれますように。なんて。
何でその傷を負ったのかは知らないけど、でも私もエースもルフィもサボが戻ってきてくれたことがとっても嬉しいんだよ。傷があろうがなかろうが、サボはサボだし、その傷でサボが一喜一憂することなんてない。その傷のせいでサボが悲しい思いをするというのなら私はサボのそばにいるし、私がサボを守ってあげる。ふわふわと潮風に揺れる金髪が顔を掠めてきてちょっぴりかゆい。ゆるりと離れたサボのその顔は、まだ固いけどほんの少し晴れ晴れとしたような顔になっていた。


金色の太陽

バイクを走らせるサボにしがみついて風で流れる髪を見る。ふわふわだな、やっぱり羨ましい。ぽつり、「好きだよ」と言うとサボは「うん」と言った。


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