おーい!とウソップの私を呼ぶ声にガタンと立ち上がる。もしかして!とウキウキする気持ちを抑えつつウソップの方へと向かった。ウソップガーデンの方へ行ってみると甘い匂いに満足そうに笑うウソップがいた。


「ウソップ! 出来たのね!」
「おおname! 見てみろよこれ〜すげェ綺麗に出来たと思わねェか?!」
「凄いよ本当に凄い! いや〜やっぱりウソップにかかればこんなの余裕なんだね」
「まあな! おれ様にかかればこれくらいどうってことねェさ!」


何たってこのおれはキャプテンウソップだからな〜!と声高々に笑うウソップにつられて私も笑ってしまう。すぅ、と匂いを嗅いでまた口角を上げる。気前のいいウソップは沢山お裾分けしてくれて今度私も何かお礼をしてあげなくてはと思った。ウソップは何がいいかな、珍しい植物の種でもあれば買ってあげよう!







両手にいっぱい抱えながらキッチンへと顔を出す。そこには今晩何を作ろうかとムムムと眉をひそめながら煙草をふかしているサンジくんがいた。音を立てないように、驚かしてみよう!と思いそろりそろりと近付くと私の気配に気が付いたのかバッと顔を上げた。見つかっちゃったと思うとそんな私を見てサンジくんはクスリと笑った。


「どうしたんだいnameちゃん?」
「じゃーん!見てこれ〜!」
「イチゴ? こりゃまた…大量にあるな」


両手に抱えていたイチゴをテーブルの上に置いた。1粒手に取るとサンジくんはなかなかいい出来だなと感心した様子だった。ウソップに作ってもらったんだと話をするとアイツ何でも出来るんだなと言いながら笑った。


「サンジくん、一緒にこれ食べよ」
「おれと? じゃあ、これ使って何か作るから待っててくれよ」
「ううん、このままにして食べよう」


イチゴの入ったカゴを持ち立ち上がるサンジくんを慌てて制する。立ち上がったサンジくんの手をギュッと掴んだものだからサンジくんは驚いた顔をしていた。


「こっ、このまま、ね! 一緒に食べよ」
「そのままでいいのかい?」
「うん、このままで。 あの、サンジくんの作るスイーツだってとても美味しいし食べたいけど、これは、そのまま。ね!」
「ありがとうnameちゃん。じゃ、そのまま食べようか」


このイチゴを使って作るサンジくんのスイーツもとっても美味しいのだけれど、そのままで美味しく食べれるらしいから。喋っているうちに恥ずかしくなってしまってぽぽぽと顔が熱くなる。そんな様子を見てサンジくんはまた笑う。うう、恥ずかしい!

イチゴをサッと洗って蒂を取った状態にして持ってきてくれたサンジくんにありがとうと言う。いただきますと言った声が重なってまた2人でクスリと笑う。ウソップの作ってくれたイチゴを口の中に放り込むとそれはそれは、とても…とっても、


「すっっっぱぁ!」
「お、すげェ甘いなこれ!」
「え?」
「え」


2人して顔を見合わせる。ええ、甘い?そんなそんな、おかしい!甘いだなんてお世辞でも言えないし思えない!じとりとサンジくんを見るといやいや本当に甘いんだって!と両手を振っていた。お、おかしい。全然甘くないのに! もしかしたら私が選んだ手に取ったイチゴがたまたま酸っぱかったのかもしれない。そうだきっとそうに違いない。また1粒手に取り口の中に放り込む。


「ひ、ひー!すっっぱい!すっぱいすっぱい〜!」
「ええ? こんなに甘いのに何言ってんだnameちゃん」
「甘くないよ?! やだ…おかしいこんなのおかしい!えっ、サンジくんこんなこと言ったら失礼だけど本当に甘いと思ってる?」
「いやほんとに、野郎が作ったのにしてはすげェ甘いと思うが」


サンジくんの口の中に運ばれるイチゴを恨めしそうに睨む。相変わらずサンジくんは甘い甘いと言って幸せそうな顔をする。ああ、どうして私はこんな目に遭っているのだろうか。

はぁ、とため息を付きながらぽりぽりとイチゴを食べる。甘くない、全然甘くない…。気が付くとサンジくんは立ち上がって冷蔵庫に何かを取りに行っていた。


「nameちゃん」


ぽつり。サンジくんに呼ばれ後ろを振り返ると目の前いっぱいに広がるサンジくんの顔と、口の中に広がる甘くて酸っぱいイチゴ。ビックリして固まる。あ、サンジくんまつげ長いだなんてどうでもいいことを考えてしまう。いや、でもそれよりもあのイチゴがとっても甘い。ああいやでもそれよりも、イチゴの味よりも、唇が、当たってる。

ごくん、と飲み込むとほんの少しだけ離れたサンジくんはニコリと笑った。私は何がなんだか分からなくてただただ固まるだけだった。サンジくん、何した?


「どう? 味は」
「え、と。あ、甘かっ、たよ」
「はは、そりゃ良かった」
「何、したの?」
「ん? ただ練乳かけただけさ。 そんなに酸っぱいのかなーって思って」


ああ、だから甘酸っぱかったんだ。イチゴの酸っぱさと練乳の甘さがとてもマッチしてとても美味しかった。いやでも、練乳の甘さよりも、もっともっと甘かった。変なの。おかしい。練乳だけじゃないきっと。

サンジくんは練乳の入れた小皿を置いてくれて、これで酸っぱい思いはしなくて済むだろ?って微笑む。それは、確かにそうなんだけど。何でサンジくんは!


「どうしたんだいnameちゃん? もう食べない?」
「いや、食べる! 食べるよ」
「そっか、なら良かった」


おれも練乳付けて食べてみよだなんて言って食べるサンジくんを横目でチラリと見る。私の視線に気が付いたのかサンジくんはほんの少しだけ悪い笑みを浮かべた。


「ん? もしかしてさっきみたいな食べさせ方じゃないともう食いたくない?」
「!」


練乳のついたイチゴを加えながら意地悪く笑うサンジくんにすぐ顔が燃え上がったのが分かった。やっぱりサンジくん、あれ分かってやったんだ!そう思うとしてやられた感が強くて、恥ずかしくて、その場にいても立ってもいられなくなってご馳走様!と大きい声でその場から逃げるように立ち去った。途中ぶつかったゾロに何真っ赤な顔してんだって言われてまた恥ずかしくなった。今日の晩ご飯、サンジくんにどんな顔してキッチンに行けばいいのだろうか!ああ、夜までまだまだ時間がある。



イチゴ、キス

(わあいい匂いするなァ!)
(おお、食うかチョッパー)
(いいのか〜? おれイチゴ好きなんだ!)
(いいぞ。でも少しは残しておいてくれよな。デザートに使うからよ)

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