∴ 指に刺さる棘のように2
「すっかり快楽に蕩けているようですね…いいですよその顔」
「あ…はぁ………」

たった今果ててしまったはずなのに全身の疼きはおさまるどころか増していて、体が自然にぶるぶると震えだした。
体中を這い回っているなめくじがもぞもぞと動き回るのも、手首に巻きつかれた蔦が擦れるのさえもすべて快感として変換されていた。

「あ…っ…あぁ…あ…」

強制的に与えられるものに感情がついてこなくて、瞳からぼろぼろと涙がこぼれ始めた。
こんなのはいやなのに、熱くて、体の奥まで、全部熱くて、流されてしまいたいと思った。

「理性など捨てたほうがいいですよ。そのほうが一層楽しめますよ」
「う…っ…い、や…だ…」

息も絶え絶えに呟いた。狙ったかのような三篠の囁きに、おれが拒むことさえも全部見通されているようで怖かった。

「まだ従わないと言うつもりですか。なめくじを腹いっぱいに詰め込んでこのまま夏目
殿を放置することも私にはできるのですよ?」
「…っぅ!」

また脅しで従わせようとする。どうして三篠がここまでするのか全く理解ができない。回らない頭では尚更だった。

「ここまで言って聞かないのであれば、体に覚えさせるしかありませんね…」
「う…ッ…あああぁあぁぁ!?」

まだ中に入れられたままだった指を急に動かされて、腰がびくびくと跳ねあがった。
二本の指がそれぞれ違う動きで翻弄し、すぐに下半身も硬さを取り戻した。
やっぱりこんなのを続けられたら耐えられない。

「…三篠ッ…やめて…くれ…ぅっうぅぅ…」
「言葉が違いますよ?きもちいい…でしょう?」
「は…ううぅあああぁぁッ…あぁそこ…だめ…っううぅ」

執拗にとあるポイントばかりを適度な刺激で攻められて、すっかり息も絶え絶えの状態に陥っていた。
けれどさっきと違って達することはできずにじらされているようだった。

「さっきから腰が揺れていますね。よがり悶えて…そんなに堪えられないですか」
「うぁ…はぁ…ああぁうぅッ…ひぅッ…」

聞かなくてもわかっているくせに、わざとなじるように言ってくる。そんなに言わせたいのだろうか。
きもちいいとおれの口から言わせたいのだろうか。
強請ったらこの中途半端な有様から抜け出せるのだろうか。
甘い誘惑をずっと耳元で囁かれ続けていれば、洗脳されるようにそのことだけしか考えられなくなるのを知った。

「あぁ…はッ…っううぅみす…ず…おねがいだ…イかせて…?」

口に出してから後悔してももう遅かった。

「ふふっいいでしょう…では私がお相手しましょうか」
「え…ッ…!?そ、それって…もしかして…?」

見せられたものを目にして、一気に青ざめた。
そういえば三篠は半分が人間の姿で、半分が馬の姿だったのを今思い出した。

「や…やっぱりいい!ムリ、ムリだ…そんな…!」

妖に犯されるだけならまだしも、獣に犯されるなんて道徳的に反する行為はしたくなかった。
そのうえ今まで目にしたことの無い大きさと、太さと、形のモノで不安にならないはずがない。

「心配しなくても今の夏目殿なら痛みもなくスムーズに入りますよ。この私が念入りにほぐしたのですから」
「…ッ」

どうやらやめる気はさらさらないようで、ゆっくりと指を引き抜いた。
そして亀頭がなくて先端が像の鼻のようになっているペニスを、ぐいぐいと尻穴に押し付けてきた。

「ひ…はぁ…ッ」

それだけなのに媚薬で全身が性感帯となった体では、震えながらあえぎ声を出すしかできなくて悔しかった。
きっと触手の蔦に支えられていなければ、とっくに地面に倒れこんでいただろう。

「はぁあっ…ひッ!ふうううあっぁぁああぁぁ…あ、あぁはあぁああぁ…!」

擦り付けるだけだった三篠のものが、遂にそこをこじ開けてゆっくりと中に侵入してきた。

(いやだ…ッ…なんだこれ…全然痛くない…なんて…きもちいいなんてどうして…おれは…怖い…)

体は完全に拒否反応を起こしているはずなのに、甘い痺れを伴う圧迫感に蕩けてしまいそうだった。
限界まで拡げられた穴の奥底までギチギチに三篠のものが詰まっていて、少しでも動こうものなら壊れそうだった。

「はぁっ…はっ…は…あぁ…うっ…」

必死で息を整えて正気を取り戻そうとしたが、足ががくがくと変に麻痺するように震えてそこから強烈な快楽が生まれつつあった。

(妖の…三篠の…獣のを入れられて感じてるなんて…そんなおれは…あぁ…)

「そんなに私のを受け入れたのがショックだったのですか?すっかり目に生気がない。それはそれで好都合ですが…」
「んあぁっ…み…すず…こわい…おれ…」
「心配しなくても媚薬はしっかりと効いているし、すぐにこの大きさにも慣れますよ」

三篠はそう言っておれの頭を人間の手のほうで撫でて優しく微笑んだから、ほんの少しだけ震えがおさまった気がした。

「くぅうぅ…ああぁ…あ、あぁあッはああぁぁ…!」

ついに中で淫棒が暴れ始めて、思考は一気にまどろみの中へと消えていった。
与えられる衝撃の凄まじさにあっという間に自分の下半身は、白濁液を放出してしまった。
出している間も後ろが責められていて、まだ出したばかりだというのにすぐ上を向いてそそり立った。

「や…うぅ…ッ…ひッあぁぁああ…はぁあ…あぁ…はッ…」
「枯れ果てるまでイッていいのですよ?まだ私も出してませんしね。人の体で受け止められる量かどうかはわかりませんが…」

もう何を言われているのかすらも理解できないくらいに理性を手放していた。
きっと優しい言葉を掛けられたんだと勝手に解釈し、口元を綻ばせた。

「あぁ…あ…はぁああッ…ううぅぅああぁぁ…っ…」

動きはますます加速して、擦れ合う部分すべてが焼けるような熱でうなされそうなくらいに暴れていた。
快楽のポイントをひたすら責めるような繊細なものではなく、中すべてを重さと圧迫感で支配して蹂躙される。

「夏目殿の体…狭くてなかなか具合がいい。私と相性が合うとは相当ですよ?ではそろそろ出すとしましょうか」

これまでで一番早い速度で三篠が動き始めて、これからどうなるかの想像がだいたいついた。

「うぁあ…ッ…だして…ぇ…はや…く…っううぅぅんんん…」

中に出されることで解放されるなら、早くそうして欲しくて言った。どんな意味に取られても構わなかった。

「ふふっお望み通りに…してあげますよ」
「ひっあっ…あ…あぁ…ふぅああはああぁぁあううぅぅんんんッ…!!」

最奥の壁に全体重をかけんばかりの勢いで押し付けた直後に、そこで白い熱が爆発した。

(なに…これっ…あつい…あつい…あ…つい…っ)

人間では有り得ない量の液が注がれて、当然入りきらない汁がびちゃびちゃと下品な音を立てて隙間からこぼれていった。
同時に果てた自分はもうすべて射精し終わっているのに、三篠のペニスはおさまる気配すらなく噴出していた。
もう頭の中は真っ白になり、半開きの口からはだらだらと涎がこぼれていた。

「う…あぁ…ひぃっ…あぁ…」
「さすがにこの量は無理ですが随分と受け止めてくれたようですね。お腹のあたりが少し膨らんでいる」

軽くぽっこりと浮き上がっている部分を撫でながら、三篠がやっと出し終わったモノを引き抜いた。

「あっ…あ…あぁ…出る…ッ…!」

栓の蓋を失った穴からはどろどろの白い液体がごぽごぽと音を立ててこぼれていた。
それに混じって中に数匹残っていたなめくじ形の妖もやっと出ていった。
汁が股を伝う度にびくびくと腰を浮かせて体を震わせ陶酔した。

「ふぁ…あぁはぁ…うぅ…っ」
「あれだけ自分ではひり出したくないと言っていたのに、もうすっかりお気に入りみたいですね」

そしてそこでまた意識がなくなっていった。



暫くして目を覚ますと全身の拘束は解かれ、水辺のすぐ横に寝転がっていた。
体とシャツが全体的に濡れていたがいろいろな汚れはすべて落ちていた。
起きあがりかけてふと、気配がしたのでそちらを見ると三篠がいた。先に口を開いたのはおれの方だった。

「なんで…こんなこと…」

何度も何度も頭の中で思っていたことを問いただした。

「あなたは主としてふさわしくわない…がおもしろいのです」
「…?」

やっぱり意味がよくわからなかった。

「本来なら私は完璧な者を好む性格なのですが、未熟な者を自分好みに育てるのも悪くないなと思ったのですよ」
「…ッ」
「斑がいるからすぐには無理だが、夏目殿には少しずつ堕ちて頂ければいい」
「堕ちるって…おれは絶対に屈しないと言っただろう!」
「…次に私が夏目殿を呼び出した時、あなたはどういうことをされるかわかっていても絶対に来るでしょう。それは堕ちかかっていると言うのではないですか?」
「な…!」

背中を汗が一筋、つつーっと流れていった。
どうしてここまでおれの考えを先読みできるのだろうか。
そうだ、どんなに酷いことをされようとも、そうされることがわかっていても三篠に会いにくる。
嘘をつかれることも、約束をやぶられるのも、一人にされるのも全部嫌だから…それは人間であろうと妖だろうと関係ない。
おれを必要としているのなら、どんな理由であれ断るわけにはいかないのだ。

「妖と交わったのだからもう普通の性行為では物足りないでしょうね…そうして会う度に体を淫らにされていく…ククッ」
「そ…れは…」

三篠を拒まなかった時点でおれの運命は決まったのかもしれない。
もう普通の人とは違う、別のものに自分がなった気がしてならなかった。

「そのうち耐えられなくなって自ら体を差し出すくらいになるのが楽しみですね」
「…」

歪んでいると思った。
でもおれの考えさえ最後まで揺らがなければ、それでもいいと諦めに似た感情がうかんだ。
誰かにここまで執着されるなんて考えてもいなかったから。少し嬉しいとさえ思った。

(きっとおれもどこかで歪んでいるんだ…)

―――三篠になら別にいいかもと思い始めた時点で、それが愛情に近い気持ちなのだと気がつければどんなによかったか。

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