∴ 指に刺さる棘のように1
「三篠…確かに用事があるなら普通に呼び出してくれとは言ったけど…これはないんじゃないか?」
「何か不都合でもありましたか?」

妖の考える普通と俺の普通にかなりの差異があったようだ。

「カエル1匹でお前が呼んでるんだってわかるから…もう部屋に何十匹も入れないでくれ…」

ニャンコ先生がいつものように呑みに行き、自分が風呂に入ってる数十分の間に部屋中がカエルで埋め尽くされていた。
踏まないようにして外に出すのにどれだけ手間と時間がかかったか。

「ちょっとしたお遊びですよ。どの子分が一番早く夏目殿をここに連れてくるか競っていたのです」
「はぁ…完全に遊ばれてるな…まぁいいや、とにかく今後はもうしないでくれよ」
「…やっぱり甘いですね」
「!」

呆れてため息をついているところで、三篠が急に顔を息がかかる距離まで近づけてきてドキッと心臓が跳ね上がった。
不意にこの間のことを思い出してしまった。

意識が戻った時にはすっかり部屋に戻ってしまっていたけれど、衣服は少し土で茶色く汚れていた。
夢ではなかったのだと思い知り、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。
いくら媚薬でおかしくされていたとはいえ、人前であんな醜態をさらすなんて有り得ない。

今日もきっと何かよくない事があるのではと思ったけれど、行かずに無視するなんておれにはできなかった。
本当に助けを求められているということも有り得るのだ。
先生に話したらきっと嫌味の一つでも言われるのだろうな。

「夏目殿…あれだけのことがあったというのに、どうして平気そうな顔をするんですか?」
「っ!」

これが平気な顔に見えるのだろうか。
なんでもないふりをしているが内心は三篠の迫力に押されて、目を合わしているのが精一杯なくらいドギマギしているというのに。
やっぱりここに来るべきではなかったかもしれない…。

「あぁもしかして、あのようないやらしいことに興味がおありなのですか?」
「は?…いや、それは、ち、違う…ッ」

またこの間の痴態を思い出しかけて慌ててやめた。
冗談じゃなかった。

「そうですね今度はわたしが直々にしてあげましょうか?」
「え…うわっ!?」

言い終わらないうちに三篠の周りに風が起こり、ボンッという音とすさまじい煙があがって視界を奪われた。

「な…っえ?すこし…小さくなったのか?」

普段ならおれの数倍は大きい三篠の体が縮んで、他の人型の妖と変わらないぐらいの大きさに変化していた。

「さすがに普段の姿では夏目殿では無理なので」
「はぁ…って、え?おれだと無理ってなにが?」
「まだしらばっくれるつもりなのですか」
「…うわッ!」

突然三篠に胸のあたりを強く押されて、そのまま後ろへ倒れこんでしまった。
なんとか受身はとったけれど驚きにすぐ動けないでいた。

―――ボト、ボト、ボトッ!

「え?」

激しい音とともに頭上からなにかが大量に降ってきたみたいで、体の上にそれらが乗っかっていた。

「なにか見覚えが…ってこれ!?」

赤いなめくじのような物体には見覚えがありすぎた。
慌ててそれらを取ろうと伸ばした両腕を同時に掴まれ、頭の上に引き上げられた。

「…ッぅ…なにを…?」

いつのまにか移動していた三篠が片方の手でおれの手を束ねて掴み、もう一方の手で緑の蔦のようなものを取り出して手首部分に巻きつけた。

「や、やめ…っぅ…!」

やめさせようと掴まれた腕を引っ張ろうとしてできなかった。
相当すごい力で押さえつけられているようでびくともしなかった。
体は変わっても力は変わらないということなのだろうか。
背筋がぞっとした。

「こ…んな…っ」

蔦を括り終わり完全に手の動きを封じると、三篠が満足そうに笑いやっと口を開いた。

「今日は徹底的にしてあげましょう…」
「…っ」

怖くて言い返すことが出来なかった。
すさまじいぐらいに三篠の目は鋭く、欲望にぎらついていたから。
ただ怒らせたという程度ではないようだった。

「う…くぅっ…」

シャツは胸の部分だけをはだけさせると、なめくじ達が群がるように一斉に中にもぐりこんでいった。
媚薬まじりの毒を全身に塗りたくりながら移動していく。
ズボンと下着もさっさと奪い取って、下半身にもなめくじを乗せられた。
最初は全く反応を示していなかったが、時間が経っていくにつれ早まる鼓動と一緒に硬くそそりたってきた。

「はぁ…ああぁ…ぅ…は…」
「どうやら前より感度があがってきているようですね。でも今回の目的はそっちではないですから」

すでに焼けるような熱さが全身に広がりきっていて、ぼんやりとしかかった頭で三篠の行動を理解するのは不可能だった。

「な…に…?」

両足を左右に大きく開かされて、その中心に体を滑り込ませるとありえないところになめくじを落とした。

「ひ…っぅ…つめた…そこ、っ…は…」
「さすがにはじめてでわたしのものを入れるのは忍びないので、これで充分にほぐしてあげましょう」

何匹かを指に取りぐちゃぐちゃと液を後ろの穴の周辺に塗りつけている。
そんなところを誰かに見られるのも触られるのもはじめてなのに、媚薬を塗られるなんて最悪だった。

「媚薬などは直腸で吸収すると、まわりが早いんですよ?知っていましたか」
「う…っあ…は…やめ…て…うぅっ」

言葉通りでまだ少ししか塗られていないはずなのに、他の箇所とは比較できないほど強く疼いていた。
もどかしさにぶるぶると腰が勝手に揺れ動いていた。

―――ニュプッ!

「は…は…ぅつううぅ!?な、っ…まさ…か…っ…」

なめくじの出す蜜にぬめりに乗って、何かが中に侵入してきた。

「すんなりと入りましたよ?妖が…」
「ひっ…!?や、やめろ!出せ…ッうぅ…!」

あまりのおぞましさに気が遠くなりそうだったが、足をじたばたと動かし懸命に抵抗を試みた。
だけど全然びくともしなくて、三篠は調子に乗って二匹三匹とどんどん中に入れていく。

「うあっ…あぁ…やだ、中で…動いて…い、やだ…うぅ…ぁ」

もぞもぞとした異物感が中で移動しているのが本当に気持ち悪かった。

「夏目殿がそこまで嫌なのなら自分で押し出せばいいじゃないですか?」
「く…ぅっ…は…そ、そんな…」

妖を自分でいきんでひり出せということなのだろうか。
そんな恥ずかしいことなどできない。
けれどこのままでは中に侵入した妖がずっと蠢き続けて快楽を与え続けるだろう。
蕩けかかった頭では正常な判断がなにか、もうよくわからなかった。

「あ…う…み、すず…おねがいだ…中の、出して…くれ…」
「ふふふふっ、随分と素直になりましたね…その姿悪くない」

ニヤリと心底意地悪そうに笑うと、頷きながら指を一本入れてきた。

「っぅ…くぅ…はああぁ…」

なめくじとは違うごつごつごした指の節が通っていく度に、足がびくんびくんと跳ねた。

「ほぉ、なんだか穴が喘いでいるみたいにヒクついてわたしの指に絡んできていますよ?」
「う…うるさいっ…!っぅ…は、やく…」
「なかなか取れませんね…」
「は…っぅ…はやくううぅ…あ、そんなにかきまわさ…ないで…っ」

遊ばれているのではないかと疑うくらい的確に、三篠の指は巧みに動いていた。
もうすっかり媚薬で中はとろとろにされていて、このまま果ててしまいそうなぐらい前の限界も近づいていた。
少しの刺激がすさまじい気持ちよさに変換されて襲い感覚が麻痺してきていた。

「あぁいいんですよ、イッってしまっても?」
「…っ!」

心を見透かしたかのように言う三篠に腹が立った。
きっと妖を出してくれる気なんてさらさらなくて、ただ面白がっているんだ。

「しょうがないですね…じゃあもう一本入れますよ?」
「うぁっ…そ、それは…待って…ぅっうううぅ…!」

制止する間もなく指が増やされ、更なる圧迫感に身悶えた。

「ここ、ですか?」

とある箇所を二本の指で同時にぐいぐいと押された。

「は………っああぁ…!!」

気がついたときには熱い粘液を放出し、お腹の上をぐっしょりと汚してしまっていた。

「あ…はあぁ…はっ…は、はぁ…」

あまりの強烈さに激しく息を吐き出した。
なにが起こったのかよくわからなかった。

「…夏目殿?きもちよかったですか…?」
「はっ…ふぅ…うぅ…っ…?」

涙がじんわりと浮かんだ瞳で三篠の顔を見ると、優しく微笑んでいた。

「…きもちよかったですか?」
「あ………?ん?あ…あぁ…うん…」

深く考えずに頷いた。三篠がにっこりと笑っていたのが少し嬉しくて、自分も微笑んだ。

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