時友四郎兵衛

いい人




休日、珍しく体育委員会の活動もなかった僕は怒涛の委員会活動で汚れに汚れた洗濯物を片づけようと山のような洗濯物と格闘していた。途中左近や三郎次にせっかくの休みなんだから団子でも食いに行こうって誘われたんだけど、途中で放り出していくのもはばかられたのでそれを断り洗い終わった忍服や手ぬぐいを長屋の前にある竿に干し終わってやっと一息つけるー、とのびをして部屋に引っ込もうとした時だった。

「おーい、雨が降るからせんたくもん、しまったほうがいいよー」

へ?と竿の方に体を向けると確かにぽつぽつ、地面に丸い染みができ始めていた。ついさっきまで晴れてたのになあ、せっかく洗ったのにどうしようかと考えながら声の聞こえたほうに「教えてくださってありがとうございまーす!」と声を上げると「いいんだよ、いいんだよ、濡れて風邪ひかんようになあ」とだけ返ってきた。

優しい人だなあ、あとでお礼言いに行かなきゃと思いながら、だんだん雨音を大きくさせてきた外に飛び出し湿り始めた洗濯物を急いでとりこんだ。なかなかの量があったそれを全部部屋に放ったころには僕は体全身びしょ濡れになっていて、本当に風邪をひきそうなくらい体が冷えてしまった。すぐお風呂にはいったんだけれどまあ結局風邪は引いてしまったんです。

その間不思議だったことが二つある。一つは風邪が治るまで枕もとに葉っぱに乗った油揚げと甘酒が置いてあったこと。あげは時おり饅頭になったりアケビになったりもした。左近たちに聞いても誰も知らないとのこと。それと、出かけてた左近たちが言うにはあの日の雨は天気雨だったみたいですぐに止んだそうだ。天気雨は狐の嫁入りって言うから、もしかしてあの時の声は狐の声だったのかなと今では考えている。

またあったら、ごちそうさまとありがとうを伝えたいなと思っている。



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