三反田数馬

嘘つき




保健室の夜当番だった数馬は一人静かに息をついた。委員長の善法寺伊作先輩も実習で学園におらず、いつも騒がしい下級生もいない保健室は不気味なほどに静かだ。大きな怪我をしてくる生徒もいないし、衝立の向こうの布団に眠る者もいない。どこか広く感じる保健室に数馬は一人だった。まだ下級生とはいえ僕ももう三年だ。それほど寂しさは感じなかった。

ぷつり、腕が痛む。

ふと、腕に巻いた包帯がよれているのが見えて包帯の端にてをかける。結び目をほどいてくるくる巻き取る。そういえば今日はろ組の三人を見ていない。またどこかで迷子になった二人を探しているのだろうか。鉢屋先輩に作兵衛のことを尋ねてみたけれど結局わからずじまいだったし。それとも、もう長屋に引っ込んでいるのだろうか。見つかったなら声くらいかけてくれたっていいのに。それともまた僕のことを忘れているのだろうか。はは、いつものことだけどね。さすがに慣れた。

ぷつり、今度は腹のあたりが痛んだ。

ほどき終えた包帯をまとめて床に置いて部屋の角にある行灯の火に腕をかざす。いつからだったかぷつりぷつりと皮膚が盛り上がってそこに真一文字に傷が走るようになった。今では腕だけでなく、からだ全体あちこちに散りばめられたその出来物のようなものを隠すにもそろそろ限界だ。

「ま、誰も僕のことなんか気にしてないからわからないか。ははっ」

これも不運だから仕方ない。仕方ないよねぇ。

ぷつり、首の後ろが痛みを訴えて思わず手を当てたそこがぱっくり口を開いた。


「う そ つ き」



首の後ろから聞こえるケラケラ笑いに、声も出せず見開いた僕の目にうつった、僕の腕に咲いた目玉たちが、声も出せず目を見開いた僕を、色のない瞳で淡々と見据えていた。



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