山村喜三太

押入れ




僕が忍術学園に入学する前、その前の風魔忍術学校に入学するよりも前の話。

僕の家は大きいけど古くってボロボロで湿っぽくて、たくさんのなめさん達がいっぱい住んでた。もちろんリリーばあちゃんも居た。
僕はリリーばあちゃんのこと嫌いじゃないけど、やっぱりばあちゃんは厳しかった。
僕がなめさん達と遊んでたりすると怒られて、聞きわけが悪いと言ってお仕置きによく押入れに閉じ込められた。中は真っ暗で、外の留め金をかけられてしまうと中からじゃあ開かない。
泣きながら謝ってもなかなか許してくれないし、初めて閉じ込められたときは怖くて怖くて仕方がなかった。けれど何度も何度も閉じ込められるうちに僕はすっかり慣れてしまって、押入れの奥にこっそりお菓子を隠しておいて、いざ閉じ込められたときにお菓子を取り出して暇つぶしに食べて、お腹いっぱいになったら眠くなって、寝ていたところを心配したお母さんに見つけられるってこともあった。

それから僕が風魔忍術学校に入学することが決まって、これを機に古い家を建て直そうってことになった。
下見にやってきた大工さんが、僕達の家を見て回って首を傾げている。「部屋と部屋との壁の中に空間がある」というのだ。確認のために壁を剥がしてみることになった。
その壁というのが、僕がいつも閉じ込められていた押入れの奥だった。壁を剥がして、僕達はみんなきょとん、とした。確かにそこには隣の部屋の壁との間に人が一人やっと入れるかってくらいの空間が開いていたんだけど、その壁の中に、お菓子の包み紙が落ちていたのだ。
もちろん、その壁と壁に空間があるのなんて知らなかったし、入れるような仕掛けもなかった。
どうしてあんな空間があったんだろう。僕が隠れて食べていたはずのお菓子の包み紙が、どうしてそこにあったんだろう。



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