竹谷八左エ門
不破雷蔵
鉢屋三郎
※現代妖怪パロディー


食欲的好意




コンビニの帰り道、ふと見通しの悪い道の角に立ち尽くすオレンジに塗装された首に乗っかったミラーが目についた。そういえばこの辺では事故がやけに多いと聞く。パトカーやら救急車のサイレンが聞こえたら大体がここのT字路での事故であるとさえ大家さんが言っていたのを思い出す。

ふと三郎が足を止めてキラキラした目で俺を見てくる。なんだなんだ、アイスならもう食っただろ。


「はちにトッテオキの話をしてやろう」
「長くなりそうなんで遠慮するわ、暑いし」
「まあまあ、そう言うなよ。流行りのツンデラか?」
「誰が気候だ」
「アイス…おいしい」
「雷蔵、私のアイスバーも舐めていいんだぞ」
「さっさと話しなよバカ三郎」



恥ずかしがり屋さんだなあ雷蔵は。さて、はちに言ったことがあったかわからんが私たちは鎌鼬だ。雷蔵が転ばせて私が切り裂く。そしてあいつが薬を塗る役割だった。あいつは少々変わり者だったが真面目でいいやつだったんだがなあ。事故の折りにはぐれてしまってそれからとんと行方がわからなくなってしまった。まあ、あいつのことだからどこかで上手くやってるだろうけど。

「どうだ、私のこと敬ってくれていいんだぞ」
「いやいや、なんでだよ」

にんまり気持ちの悪い笑顔を浮かべながら三郎はちょいちょいとあの角のミラーを指差す。中心に俺、両脇には雷蔵と三郎が立っている。なんでこいつらが映ってるんだろうか、見たくない現実から目をそらそうとそんなことを考えながらもやはり見たくないものほど見えてしまう。

ミラーに映り込む俺たちの周りを囲むようにぐにゃぐにゃした肉色のものや黒色に黒色を混ぜたような人に似た影などわけのわからんものどもがうじゃうじゃ蠢いている。

突然、ミラーの中の雷蔵が軽く地を鳴らすと波のように押し寄せていたそれらが足を止める。続いて三郎がひゅん、と軽く手を振るとやつらのからだが四散して空気にとけるように消えていった。


ポカンと口を開けて立ち尽くすことしかできずにいる俺をくるりと振り返って二匹はニッコリ笑った。



「「おいしそうって言ってる」よ」



「私、すごいだろ。情け深いだろ。敬え崇め奉れ」
「ドヤ顔やめろ」
「三郎、見るにたえないから僕より五歩あとをついてきて」
「はいっ」
「さ、帰ろ帰ろ」
「…おう」



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