斉藤タカ丸

見えない




ご存知の通り、僕は元髪結いだ。

今は忍たまとして忍術学園で勉強させてもらってるけど、ちょっと前までは父と一緒にお客さんの髪を結っていた。そのときにあった話をしようと思う。

たまーに変わったお客さんがやってきたんだ。
ああ、忍びとかそういう話じゃなくてね、普通の人なんだよ、…多分。

首から上が、何か…黒い靄に覆われていて、見えない人がくるんだ。

顔なんか全くわからない。首から下と声だけで判断してるからはっきりしたことは言えないんだけど、男だったり女だったり、若い人からお年を召した人まで、その靄は取り巻いている。
毎回バラバラだね。確か一月に二、三人はいたかな。

始めて見たときは驚いて、思わず父に「あの人、」と言いかけて、「やめなさい」と父に制された。ああ、父にも靄は見えているんだと思った。

僕らの仕事は首から上を飾ることで、そりゃ困ったけど、プロだからね。手探りでなんとかやっていたよ。
みんな喜んで、また来ます、って帰っていった。うーん、目隠し将棋みたいなものだと思ってくれればいいかな。

不思議だったのは、その黒い靄が見えるのは父と僕だけで、他の人にはちゃんと顔が見えているらしいってこと。
あとは髪結いの仕事を辞めてからはあんまり見なくなったね。
…ここに来てからも見たことはあるのかって?
さあ、どうだと思う?



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