摂津のきり丸
土井半助


象牙




バイトの帰り道、いつもは通らない路地裏で変な婆さんに彫りの入った白い石みたいなのがついた首紐をもらった。すごい怪しい格好をしていたけどタダでくれるっていうからそれを捨てることもできず、ついつい持って帰ってきてしまった。

よくよく石を見てみれば、石というよりは前にしんべえの家で見せてもらった舶来の象牙に似ている。乳白色で少しざらざらとした手触りは象牙そっくりだ。良い貰い物をしたなと売り払うまでの間、せっかくだから首から下げることにした。

夜、風呂から上がってほてほて湯だったからだを風に当てながら廊下を歩いていたときだった。俺が歩いている目の前にトン、と小さな音をたててなにかが転がった。拾って月にかざしてみればどうやら首にかけているものと同じもので。どうしてこんなところにあるのかとか、どうして上から降ってきたのかといった考えは二つ目のトン、という音にふわり消えていった。

拾って少し進むとまたトン、また拾って少し進むと、トン。それを幾度か繰り返して九回目、廊下の突き当たりになった影の方から聞こえたその音の方に向かおうとした俺は急に後ろから持ち上げられて思わず悲鳴をあげそうになった。が、慣れ親しんだにおいを感じてひやっとしたのを落ち着けながら、ため息つきつき首を後ろにやった。

「こんなところでなにしてるんですか?土井先生」
「きり丸こそ、そんなもの持ってどこにいく気だ」
「え?これっすか?へへー、次の休みに町に売りに行くんすよ。いい金になりそうでしょ?」
「そんなもん、誰が買うか」



それ、人の指の骨だぞ



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -