食満留三郎
善法寺伊作


水切り




暑い日が続いて見ているのも可哀想になった委員会の一年たちをつれて近くの川原までやって来た。伊作と二人並んで手ごろな石に腰かけながら無邪気にはしゃぎ回るあいつらを眺めて、連れてきた甲斐があったなあと呟けばそうだねぇとのほほんとした声で応えがあったものだから、まるで夫婦みたいだなんて考えてしまった自分が少々気持ち悪かった。

「あ」

俺がついさっきの自分に葛藤していたそのとき、伊作がなにかを見つけたように声を漏らした。伊作の視線の先、乱太郎としんべえ、喜三太が川縁で小石を拾って投げている。どうやら水切りをしているらしい。

「懐かしいな。俺たちも昔、誰が一番遠くまで長く飛ばせるか競ったもんだ」
「まあ、僕たちというより留さんと文次郎と小平太の戦いだったけどね」
「仙蔵は見物、長次は棄権でお前は投げた石がなぜか後ろにすっ飛んで木に当たって跳ね返ったのが頭にぶつかってたん瘤作ってたからな」
「あれ結構痛かったなあ」

言って伊作は頭の後ろの方を擦りながら空笑う。本当に懐かしい。

「あれって結局誰が勝ったんだったか」
「ほんの少しの差で文次郎が勝ったんだよ、確か」
「そうだったか?いや、でも、あれは俺の勝ちだろう」
「まぁまぁ、いいじゃない。昔のことなんだし」
「…だな。じゃあちょっくらチビ共に俺の腕を見せてやるかな」

立ち上がってぐっと体を上に伸ばす。膝と腰骨が鈍い音をたてた。コキコキ手首を軽くならしていると伊作がこちらをじいと見ているのに気づいた。先ほどまでの雰囲気はどこへやら、真面目な顔をして俺の目の前に指を突き立てる。

「張り切るのはいいけど、絶対水切りが川を渡らないようにしてね」
「どうしてだよ」
「川を渡るっていうのは縁起が悪いんだ。ほら、三途の川を渡るって言うだろう?」
「そんなん、語呂が一緒なだけだろ」
「いいから、気を付けてよ」
「はいはい」

後ろ手に手を振りながら川岸の三人に近づいて声をかける。きゃあきゃあ騒ぎながら笑う顔が可愛らしくて、つい、しんべえに渡された石を持つ手に力が入る。ほら、小さいやつの前では良い格好していたいじゃないか。あれだあれ。

水面に平行になるように腕をヒュン、と振れば川の上を石がとぶように跳ねた。

一回、
二回、
三回、
四回…


「「あ」」
「わぁ、すごいです!食満先輩の石、あっちの岸までいっちゃったー!」
「ねっすごいねー!」
「ふにゃ?あれぇ?あっちの岸から、なんか来てなぁい?」
「ほんとだ、牛みたいだけど牛って二本足で立てたっけ?



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