鵺式。
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・みんな仙蔵が大好き全5つ 


※小平太と仙蔵

「いけいけどんどーん!」
「七松か、今日もやってんなあ」
「あいつホント元気な」
「元気過ぎるくらいだぜ、この前も校舎を破壊してたしな」
「確かに、あいつは少し鬱陶しいくらいだよな」
「ははは、言えてる」
「おい」
「あ?」
「聞き捨てならないな」
「な、なんだよ立花」
「鬱陶しいのはお前らだろう。人の陰口をぐちぐちと周囲の耳を汚すような声色で。聞き苦しくて堪らん」
「ただの冗談だろ。わ、悪かったよ、そんなつもりはなかった」
「気を付けるからさ、そんなに怒るなよ…」
「ふん、もういい」
「じゃ、じゃあな…おい、いこうぜ」
「ああ…」
「…全く、」
「仙ちゃん」
「う、わ、…小平太か。驚かすな」
「仙ちゃん、今から裏々山まで走ってくるんだが、一緒に行かないか」
「今から?いや、私はこれから図書室に用事があるから、また別の機会にとっておくよ」
「そうかー…」
「…?、なんだ?」
「…仙ちゃん、ろ組の長屋にくればいいのに」
「はあ?いや、私はい組の長屋があるしな…」
「そうか?いっそみんな同じ大部屋ならよかったのになー」
「ははは、それは毎晩賑やかそうだ」
「だよな!よし、走ってくる!じゃあな、仙ちゃん!」
「ああ、気をつけてな」
「任せておけ!いけいけどんどーん!」
「…なんだったんだ?」


※留三郎と仙蔵

「あーあ、俺って上級生として失格なのか…?文次郎の言葉を気にするわけじゃないが、甘やかし過ぎているというのもあながち、全く、少しも、ないとは言えないし…あいつらの顔見るとなんかあんまり強く叱れないというか…いちいち口を挟んで何か余計な世話のように思われちゃいないかというか…」
「おい、留三郎」
「あん?、ッてえ!なにすんだいきなり!」
「監督不行き届きだ」
「ああ?」
「あの湿り気コンビだ!見ろ、私のこの姿を!お前の世話が行き届いていないからだろうが!」
「…世話が行き届いていないと思うか?」
「お前以外の誰があいつらを世話するというんだ?今度何かあった時はお前を爆破してやるからな!」
「そう、か…」
「…なんだ?その気色悪い顔は」
「いや、なんでもねえよ。なんかすっきりしたわ、ありがとうな仙蔵」
「…ますます意味がわからん。なんだ、ついに文次郎のマゾっ気までも伝染したか」
「ああ、まんまとあいつの言葉に踊らされるとこだった!クソ、腹立つ、今すぐあの横っ面をぶん殴りたくなってきた!」
「……私の分も二、三発殴ってきてくれ」
「なんだ、お前もなんか言われたのか?任せとけ十発でも二十発でも入れてきてやるよ!」
「ああ、頼んだぞ」
「頼まれた!じゃあな!」
「…伊作に薬でももらいに行くか」


※伊作と仙蔵

「おーい、誰かいませんかー…はあ、もうかれこれ一刻は穴の中にいるな…学園の端だから誰か通るともあまり思えないし…僕はその奇特な誰かが通りかかるまで独り言をぶつぶつ呟いているしかできないし…あー、数日このままで骨と皮だけになったらどうしよう、なんだか切なくなってきた…」
「何をぶつぶつ言っているんだ」
「…あ、仙蔵」
「こんな所にいたのか伊作、探したぞ。いいから上がってこい、ほら」
「あ、ありがとうー…よいっしょ、と」
「ああ、全く、泥だらけじゃないか。ほら後ろを向け」
「ごめん、ありがと…」
「よし、大分マシになったな。あとはこれで顔でも拭え」
「何から何まで…ごめん、僕頼りないばっかりで…」
「うん?そんなことはどうでもいい。それより伊作、火傷に効く薬をくれ」
「え、また?…て、なんか仙蔵もボロボロだね…」
「まあ…色々あってな…」
「もういっそいつでも調合できるように部屋に小さな薬箱でも置いたら?薬も少し分けてあげるし、調合法も教えてあげるからさ」
「いや、いい」
「なんで?」
「お前がいるから。お前の薬の方が正確だし、なにより一番効く気がする」
「…仙蔵」
「なんだ」
「いや、なんでもないよ。じゃあ僕の部屋に行こう。すぐ用意するから」
「ああ、よろしく頼む」


※長次と仙蔵

「ああ、長次。やはりここに居たな」
「…仙蔵」
「ちょっとこれをな、返しにきたんだ」
「…それは、文次郎が」
「文次郎の机に長く置かれていたのでな、手持ち無沙汰になったときに読んでみたらこれがなかなか面白い。どうせ文次郎は延滞しているのだろうから、一度返却して私が借り直そうかと思ってな」
「…わかった」
「すまないな。ところで文次郎のやつ、どれくらい延滞していたんだ?結構前からあったような気がしたが…」
「……二…」
「二週間もか?全く、しょうのないやつだな」
「…ヶ月……」
「ちょ、長次、顔が笑っているぞ。すまない聞いてはいけないことを聞いた」
「…いや、今、手続きをする」
「頼むよ。ああ、しかし、もうすっかり夏だな。蒸し暑くて適わん」
「…梅雨は、厄介だ」
「そうだな、梅雨は本には大敵だから…秋になれば天日干しもできるし、長次にとっても正念場だな」
「…ああ、火薬も」
「そうなんだ、湿気ってばかりでな。なかなか思うような調合ができない。それが面白いところでもあるが」
「…そうか、…終わった」
「ああ、ありがとう。そうだ長次、秋の天日干しには声をかけてくれ。作法委員会総出で手伝うぞ。一冊一冊手に取ると、掘り出し物が見つかったりするだろう?」
「…必ず」
「よろしくな」


※文次郎と仙蔵

「あー…留三郎め、今日はやけにしつこかったな…一体なんなんだ…。しかし…あの本はどこへいったんだ…」
「おや文次郎、珍しいなこんな時間に長屋に居るとは。それにしても一段と汚い格好だな、泥をその辺に落としたりするなよ」
「仙蔵か、なあここにあった本知らねえか」
「これのことか」
「お前が持ってやがったのか!」
「お前、この本を二ヶ月延滞していたそうだな?長次が笑っていたぞ」
「…う、」
「私が返却して、また借り直してきた。私名義だからまた一ヶ月貸してくれるそうだぞ。ブラックリストに乗っているお前は一週間がせいぜいだがな」
「うるせえ、仮にも人の所有物勝手に持ち出しておいてよく言う」
「ふん、備品を二ヶ月も延滞しておいて少しも悪怯れないやつに所有する権利があるとは思えないがな。ほら」
「…なんだ」
「使うんだろう」
「使う、が」
「この天気だからな、私はさっき風通しのいい木陰で読み終えた。なかなか身になる内容だったよ。お前にしてはいい本を選んだものだ」
「…長次に薦められた」
「…お前、あれだけ何度も延滞しておいて、よく本を薦めてもらえたな」
「俺にもよくわからん…」
「その日は頗る機嫌がよかったのだろう…悪運の強いやつだ。とにかく、今度こそは一ヶ月以内に返却しろ。私の顔を汚すようなことがあれば散り芥一つ残らぬように爆破してやるからな」
「…悪いな」
「ふん、町に新しく出来た団子屋のみたらし団子を奢らせてやる。ありがたく思えよ」
「…あんこもつけてやるよ」
「…なんだ、突然、熱でもあるのか?あんまり気持ち悪くて鳥肌が立ってしまったぞ…」
「いらんならいい」
「そうは言っていない。…全く、お前といい、今日は妙な日だな…」



10.09.03
拍手お礼<10.07.09〜10.09.03>
要するに、虫の居所の悪かった仙蔵と、とにかく煽る仙蔵と、女王様な仙蔵と、たまに優しい仙蔵と、文次郎の苦労を倍にする仙蔵を書きたかったわけで^^


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