鵺式。
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※現代パロ 伊作独白




「おはよう、留さん」
「はよー、珍しいとこで会ったな」

始業式の朝、通学路。僕は偶然君に会うことができた。
僕も君もいつもは通らないこの道だけど、この季節、特に今日みたいに晴れた日は、この先を行ったところにある桜並木がとても綺麗なんだ。

「早いな」
「留さんこそ」

僕達はそれ以上何も言わず、肩を並べて歩き出した。
暖かい日差しと涼やかな風が心地いい。僕はこの季節が一番好きだ。
季節も関係なく顔を合わせれば喧嘩ばかりの留さんと文次郎。鼻を啜りながら春は嫌いだと言う仙蔵。静かに窓辺で本を読む長次。うとうと船を漕いでいる小平太。それを微笑ましく眺める僕。
彼らと一緒にこうして平穏を過ごせることが、僕にとっては一番の幸せだ。

そうして幸せを噛み締めるたび、時々見る夢のことを思い出す。

やっぱり喧嘩ばかりしている留さんと文次郎。春には縁側でこっそり団子を食べる仙蔵。机に本を開いたまま庭をぼんやりと見る長次。後輩達と元気に走り回っていた小平太。それを微笑ましげに眺めていた君。
今とあんまり変わらないように思えるけど、あの頃僕らはみんな同じ屋根の下に寝泊りしていて、今ぐらいの年の頃にはもうみんなそれぞれの職に就いて稼いで、みんなろくな死に方をしなかった。

思い出す、と言っても所詮夢だ。ただ僕はそれが実際にあったことなんだって信じているだけ。あの頃の君が居なければ、きっと今の僕はいなかったと思うだけ。

時々恐ろしい夢も見るけれど、やっぱり、きっと、あの頃の記憶があって今のこの幸せに繋がるんだ。

だから。
ありがとうって、あの頃の君に伝えられたらと思うよ。





春眠、アカツキを覚えず






10.03.23
でも生まれ変わってもきっと不運

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