???

とおりゃんせ




―善法寺伊作の場合。

最近、仙蔵がおかしい。
ちょっと前に僕がおかしな目に合ってから、仙蔵は度々僕を気にかけてくれる?ようになった。
誰かに呼ばれて返事をしようとすると、振り返るよりも先に仙蔵が僕を呼び止める。そのまま仙蔵と一言二言交わすと仙蔵は来たときと同じように颯爽と去っていって、「そういえば誰かに呼び止められた」と思い出して周囲を見渡すと誰もいない。
夜な夜な目が覚めてなんとなく外の空気を吸おうと起き出すと、いつの間にか仙蔵が障子戸の前に立っていて驚いたこともある。慌てて戸を開けようとしたら「いいから」と言って、仙蔵は障子越しに僕と少し話をすると、「もう寝ろ」と言って去っていく。僕は眠くて眠くて仕方がなくて、そのまま布団に潜り込んで朝まで夢も見ないで眠る。
まるで僕を監視でもしてるんじゃないかってぐらいの間のよさで、僕はいつも飛び上がるほど驚くのだけれど、でも僕はあれからそういった目には合っていない。
実は今までもそういうことはちょくちょくあったので、それが急に現れなくなったとなるとこれはもう仙蔵が何かしているとしか思えないのだ。
でも、今まで何も気にした風もなかったのに、どうして最近は急に助けてくれるようになったんだろう。


―食満留三郎の場合。

なんなんだ、あいつは。
あいつ、仙蔵だ。あの野郎、突然俺の背後に立ったかと思ったら(しかも全く気がつかなかった!)、俺を後ろから引っ叩きやがった!厳密に言うと、俺の後ろに立って、右肩、左肩、背中の順でバン、バン、ドーン!って感じだ!いってーのなんのって!「なにしやがんだ!」とキレたら、「あまり無茶なことはするな」、だってよ。意味がわからないで苛々してたら、「級友や後輩を大事にするのはいいが、そのままではいずれ破滅するぞ」とまで言われた。
…なあ、今までなんとなーく思ってはいたんだけどよ、あいつ、なんなんだ?なんのことを言ってる?
どうして、あんな、知ったような口を利くんだ。


―七松小平太の場合。

ああ、もう駄目なんだな。
そう言うと、仙ちゃんは笑った。それから「ありがとうな」だってさ。
仙ちゃんが何を見てきたのか、何を知っているのか、私は知らない。でも仙ちゃんは仙ちゃんだ。私たちの大事な仲間。
多分、私が仙ちゃんに会えるのはもう数えるほどしかないだろう。
そう思うと、なんだか無性に暴れたかった。


―中在家長次の場合。

寂しいな、と仙蔵は言った。
仙蔵は私のことを「聞き上手だ」と言う。ただ黙っているだけならその辺の木にも出来るだろうにと思ったら、「木では駄目だ、人でなければ。でも誰しも黙っていれば聞き上手になれるのかと言うと、そうでもない。不思議だな」仙蔵はいつも見透かしたことを言う。
「お前は聞き上手だから、言うつもりのないことまでついしゃべってしまうよ」私はお前といると自分が雄弁になったような気分になる。「ふふふ、」
肝心なことは、いつも聞こえない振りをする。もし私が上手い言葉を見つけられたなら、問い詰められたなら、お前はどうしたんだろうか。


―潮江文次郎の場合。

くそ、くそ、くそ!
笑うな!
今度は、次に会ったときは、必ずお前を守ってみせるからな!



いきはよいよい、かえりはこわい、
こわいながらも、とおりゃんせ、とおりゃんせ



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