七松小平太

ひひひひひひひ




おじさんから聞いた話。
近くに住んでたおじさんの友人が別の村に引越しをするんで、その手伝いにいったそうだ。

手伝いはおじさんの他に、同じ村の知り合い二人。借りてきた馬車に家財道具を積んで、引越し先の村に向かった。

馬車をその友人が操舵して、おじさんはその隣に。後ろから二人が乗った馬がついてくる。しばらく走っていると、後ろのひとりがおじさんに声を掛けてきた。どこでもいいから馬車を停めてくれ、という。道沿いにある木陰に入ると、なぜか二人は、馬車から離れたところにとまった。

そして知人は、お前だけ、こっちに来てくれ、という。おじさんが彼らのところまで行くと、馬に乗るように言い、乗った途端にものすごい勢いで馬を走らせ始めた。

あいつを置き去りにする気かよ、とおじさんが言うと、後ろから手綱を握った奴が言った。

荷物を積む時、異様に重たい木箱があっただろう。国道に出たあたりで、その木箱がゆっくりと開いて、なかから黒い着物を着た女が出てきた。箱から上半身だけ出して、俺たちの方を見て笑った。そして、また箱のなかに戻った。 続けて、おじさんの乗る馬に並走させるように馬を駆っていた奴が言った。

あの木箱には、釘が打ち付けてあって、頑丈なものだった。簡単に開く構造じゃなかった。だから、あの女は、おかしい。この世のものじゃない。俺たちは知らずにあの木箱に触ってしまった。このまま神社にいってお祓いを受けたいくらいだ。

だったら、あいつにも言ってやらないと、とおじさん。

いや、あいつは多分、女のことは知ってると思う。それどころか、俺たちは、あいつが、なんらかの方法で、女を木箱に入れたんだと思ってる。

もうはるか遠くにいるはずのあいつの声が山を揺らすような大きさでおじさんたちに迫った。わけがわからんが丁度いい。その女のこと、あいつに聞いてみよう、とおじさんは声の方に振り返り怒鳴った。

木箱の女について、話があるんだがなんかしって…!!

おじさんがそこまで言った時


ばれちゃったか。
ひひひひひひひひひひひひ…


と耳元で声が聞こえたそうだ。


おじさん?
元気だよ、片耳はないけど



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