食満留三郎
※現代パロディー


お前に言われたくない




幼稚園時代ってホールにみんなを集めて、イベントごとを催したりするだろ。あれは5歳の時のクリスマスイベントの時だった。色紙で作られたわっかの鎖とふわふわのピンクと青の花で飾られたホールの中に体育座りで並んだ俺たちがきゃあきゃあ騒いでいるとふっとホールの電気が消えた。急な暗闇に怖がって泣き出す子もいたがそのあとすぐにでてきたサンタの格好をした保育士さんに歓声を上げ泣きやんだ。俺はそのころからサンタはいないと親から言われていた(一応言っておくがプレゼントはもらっていた、一緒に買いに行っていたけど)ので、周りのはしゃぎようにとりあえず合わせるようにわあっと棒読みに近い喜びの声を上げた。

前列に並ぶ歳の小さい子から順々にサンタが大きな袋からプレゼントを取り出して一人一人にメリークリスマス!といいながら手渡していく。半透明の袋に包まれたプレゼントの大きさからして中身は鉛筆とかお菓子の詰め合わせのようだった。サンタの後ろに控えるように代えの袋をもった保育士さんがどこかシュールだったと今になって思う。

ついに俺の番になってサンタが袋をごそごそと探ってメリークリスマス!とプレゼントを差し出した。みんなとは違う箱型のものだった。周りの奴らからはずるい!だの当たりだ!だの言われて少々嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになりながら、周囲が俺から注目しなくなったころを見計らって紙の包装を破った。箱のふたを勇んで開ける。


中には女の生首が入っていた。
そして俺を見て一言。


「10年早い」


あまりの衝撃に俺はその場で箱をぶん投げ(それが伊作に命中したのは言うまでもない)泣きながら家まで帰ったのは苦い思い出である。母さんにしこたま怒られたがもうあの場に戻りたくはなかった。後ほど心配して家まで様子を見に来てくれた保育士さんには本当に申し訳ないことをしたと思う。


どうして今更こんな話をしたのかというと、つい先日納戸の片づけをしていたときにあの箱を見つけたからだった。確かにぶん投げた記憶はあるのになぜ家にあるのか。母曰く、なんとあの日、わざわざ伊作が家まで拾って持ってきてくれたんだと。俺に言ったらきっと捨てられるから黙って納戸にしまっておいたとのこと。まあ、もう10年も前のことだし時効でしょなんて笑う母。俺はどうしたもんかと自分の部屋で片手に乗せた箱をくるくるとまわしていた。これだけ長い間家にあったんだし捨てるのもなんだかなあ。ひゅん、力が強すぎたのか箱が部屋の隅まで吹っ飛んだ。弾みでふたがぱたりと開く。


あの時の女の生首が転がり出る。
何も言えず固まっていた俺をじっと見て一言。


「チェンジで」



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