富松作兵衛
次屋三之助
神崎左門


だるまの絵




俺の家にはだるまの絵がある。
髪が長くて顔も女顔のだるまとか、太っただるまとか、ひょろ長いじいさんのだるまとか、なんか妙に人間くさい個性的なだるまが七体無造作に転がってる絵だ。

ガキのころ、俺はその絵が飾ってある部屋で寝起きしてた。
その絵の中で一際大きく書かれてる髭を生やした白いだるまがすごく怖かった。
何でかって、そいつ黒目が動くんだよ。
ぎょろって見上げてるんだけど、俺が直視すると明らかにこっち見てるんだ。
親に言っても気にせいだって言われるし、仕方ないから毎晩そいつと睨み合ってた。

それから俺は忍術学園に入学して、滅多に帰らなくなったからそのだるまのことも忘れてたんだけど、ある長期休みで実家に帰ったときに、左門と三之助が遊びに来たんだ。来たっていうか、俺が迷いまくって実家に帰れないでいるこいつらを探して仕方なしに連れて帰ってきただけなんだけどさ。

で、俺たちがそのだるまの絵が飾ってある部屋の前を通ったときだった。

「おっ??」
「おおー」

突然、左門と三之助が揃って声を上げた。
何?って聞くと、二人が目配せし合って、いや別にって。そんな思わせぶりな態度取られたら誰でも気になるだろ?
何だよってしつこく聞いたら、うーん、じゃあ外に出ようって三之助が言って、二人は俺の家の奥のほうに進んでいく。待て、そっちは玄関じゃない、今入ってきたばかりだろうが!と俺は二人を引きずりながら外に出た。

「で?なんだよ?」
「お前ん家、趣味悪いなあ」

三之助がけろりと言った。それに同意するようにうんうんと左門が首を縦に振る。
俺は危うくキレかけた。何言い出すんだこいつら、失礼な。

「あの絵、何?なんで飾ってんの?」
「だるまの絵のことか?」
「だるまじゃない、あれ生きた人間だよ。俺たちが部屋の前通ったとき、あいつら七人全員一斉に凄い形相でこっち睨んできた」



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