尾浜勘右衛門

ひょっとこの面



俺がまだ忍術学園に入学する前の話。
俺には年の近い従兄がいて、よく一緒に遊んだ。まあその従兄亡くなったんだけど、どうも死に方が不自然で、当時は親戚や近所の人たちが色々騒ぎ立てていた。

俺のうちには蔵があって、たびたびその中にこっそりと従兄と一緒に潜り込んで遊んだ。
蔵の中には色々なものが入っていて、がらくたとも骨董品ともつかないものがごちゃごちゃと無造作に置かれていた。その中から何か宝物になりそうなものはないかって、宝探しみたいなことをやっていたんだ。
俺はある大きな櫃の中から、ひょっとこの面を見つけた。不思議なことにその櫃の中にはその面以外何も入っていない。
それを俺の後ろで見ていた従兄が俺の手からひょいと面を取り上げ、その面を被って蔵の外に飛び出しでたらめに踊りだした。陽気な様子に誘われたのか近所の子達まで集まりだして、従兄の踊りはバカ受けした。ひとしきり大騒ぎしてそのまま夕方まで従兄はひょっとこの面を被って遊んでいたんだけど、そのうち何かにつまずいたのか突然転んで、従兄は倒れたまま動かなくなった。
最初はふざけてるのかと思ったけど、呼んでもゆすっても返事がないので様子がおかしいとすぐに大人を呼びに行った。大人たちが従兄を抱えあげてうちの座敷に寝かせると、それまで全く反応のなかった従兄がかすかな声で「面を…面を取ってくれ」と呻くのが聞こえる。
ひょっとこの面を取ってやると、従兄の顔色は土色、唇は紫。すっかり生気のない、まさに死人の顔のようだった。大人たちが慌てて医者を呼んで、半刻と経たないうちに医者はやってきた。
医者は従兄を診るなり、厳しい調子で俺達に言った。

「どうして放っておいたんですか!?亡くなってから半日は経っていますよ!」

そのひょっとこの面?実家の俺の部屋に今でも飾ってあるよ。
ここだけの話し、従兄の葬式が終わってから俺一人でまた蔵の中に入ったんだ。そのとき気がついたんだけど、ひょっとこの面が入っていた大きな櫃、蓋の裏にお札がびっしり貼ってあったんだよね。そのときは俺もまだ子供だったし、やばいものとかあんまり判断がつかなくて、従兄には悪いことしたなあって思う。まあ、従兄が被らなかったら間違いなく俺が被ってたと思うけどね。




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