今福彦四朗
足音
ふらりと遊びにいってしまった鉢屋先輩の捜索を不破先輩にお願いして(いい笑顔であとで連れていくねと約束してくださった)庄左衛門と一緒に学級委員長委員会に割り当てられた部屋でのんびりお茶をしていると閉めた障子越しにとっとっ、と軽い足音。暇であったから特に自慢するというわけでもなく、最近僕自身も知った僕の特技について庄左衛門に話すことにした。
「今歩いてったの二年の川西先輩だ」
「え、なんでわかるの?」
「うーん、僕もよくわからないんだけど音が違うんだよね」
障子を少しだけ開けて顔を出して先輩を確認した庄左衛門がすごいねと笑う。
「じゃあ他にはわかる人いる?」
「あんまり上級生になると足音を立てないで歩くからわからないんだけど」
とっ、と、と、聞き覚えのある足音。先輩のなかでもよく僕に勉強を教えてくれたりする優しい先輩だ。僕に会うときだけ驚かさないようにって足音をわざと立ててくださっていた。
「◯◯先輩が、来られたみたい」
嬉しくて障子に駆け寄って開こうとした手を庄左衛門がぐっと抑えた。なにするんだよ、と庄左衛門の顔を見たらさっきまでの笑顔が一変して真っ青になってる。なにかを言いかけて開いては閉じを繰り返していた唇がやっと、といった風に声を吐き出した。
「◯◯先輩は、この間の実習で…亡くなられたって」