潮江文次郎
※現代パロディー

ゆめにっき

夢日記って知ってるか？夢の内容を記録するやつ。仙蔵がはまったようであまりにしつこくやれと言ってくるから1週間だけやることにした。

だが夢っつーのは毎日見てるかもしれないが、夢をみたことすら忘れてることがほとんどだろう？枕元にノートとボールペンを置いて、６日目にやっと夢を記録することができた。めちゃくちゃ怖い夢だった。だから覚えていたんだと思う。

寝ぼけ眼でノートにサッと書いて出勤の準備をした。その日は出勤時から何か妙な感じがした。でも何が妙なのかはわからない。（なんだ？なんか変な感じだな）

外回りで駅に行く途中、先輩が他社を回らなければいけなくなった。そこで妙な感じの正体がわかった。デジャヴだ。まぁ出勤時なんて毎日同じだし、先輩が急に他社を回ることも何度かあった。でもなにか違う。そういう事じゃなくて全く同じことが前にあったような気がする。

駅の改札で中学の同級生に会った。これもデジャヴだ。やつとは同じ遊びグループだったが中学卒業後は数えるほどしか会っていない。たぶん高校の時以来の再会だと思う。

お互い多少の時間があったのでマックで少し話すことになった。話してる最中もデジャブのことが気になっていた。（いつのことだ？…ふむ…もしかして夢か？今朝の夢？そうかもしれない。）夢日記に記録したが、寝ぼけ眼で走り書きした程度で、怖い夢だったのは覚えているが夢の内容はもう忘れている。だからこのデジャヴが今朝の夢かどうかはわからないが、そんな気がしてならない。

もし今朝の夢だったとしたら、このままいくと怖いことが起こる。そいつとの会話もうわの空で考えにふけっていた。「そろそろ出ようか？」と言う言葉で我に帰りマックを出た。そいつとは行く方面が同じだったので一緒にホームに行こうとしたが、どうしてもデジャヴが、今朝の夢が気になった。

（このままいくと怖いことが起こる。引き返すか？でもそれこそが今朝の夢のとおりだったら引き返すことで怖いことが起こるな。どうするかな。）

俺は引き返すことにした。ちょっと社に忘れ物をしたとそいつに告げて別れ、得意先には自腹でタクシーで行った。それからデジャヴはなくなった。ああ良かったと思うのと同時に馬鹿な事をしたかなとも思った。デジャヴが怖くて自腹でタクシー。バカらしいな。

得意先からの帰りはさすがに電車で帰ったが、どうやら事故があったらしくダイヤが乱れていた。まさかとは思ったが駅についてから駅員に聞いてみると飛び込みがあったという。（あいつか？怖いことってこのことだったのか？）すぐにでも事の真相が知りたくて、携帯に入ってる中学の時の同級生全員にメールでそいつについて聞いてみた。
しばらくしてから今日あいつが電車に飛び込んで死んだというメールがきた。たぶんあの後すぐあいつは電車に飛び込んだんだろう。やはり怖いこととはこのことだった。かなり罪悪感があった。もしかしたら止められたかもしれない。暗い気持ちで家に帰り、仙蔵に電話で今日あったことを話し慰めてもらった。

寝る時になって、そういえばデジャヴの正体が今朝の夢かどうかまだわからないことを思い出し、枕元のノートを見てみた。ノートには走り書きでこう書いてあった。


駅で◯◯(あいつの名前)と会い、自殺のみちづれにされる。