伊賀崎孫兵





「じゅんこー!どこにいるんだい?じゅんこぉおおお」

「あ、伊賀崎先輩だ」

「どこにいかれるのかなあ」

「またじゅんこ探してるのかなあ?」

「さっきまでじゅんこ、ここにいたよね」

「うん、でもどっか行っちゃったみたい」

「いつもそうだよね」

「伊賀崎先輩、間が悪いんだもん」

「え?顔が悪い?」

「え?頭が悪い?」

「そんなことないよな」

「「ねぇーっ」」

「そうじゃなくて!間が悪いって言ったんだ!これだから一年は組は…」

「は組をバカにするな!」

「うるさい、あほのはのくせに」

「あほっていうやつがあほなんだぞ一平!」

「ああ、もう、なんとかしてくださいよ竹谷せんぱーい」



どうだ、
俺の後輩…
可愛いだろ…?


涙目になりながら俺の袴を引っ張ってくる三治郎の頭をぽんぽん軽く撫でて今にも取っ組み合いを始めそうな一平と虎若を止めに入る。一年生が多いからと託児所だなんて言われたりもするが、一年はみんないい子で委員会活動にも積極的だしなにより生き物を大切にするこいつらが俺は大好きなわけで。

「で、勘右衛門さんはどうしてここに?それと膝にのせてる孫次郎を返してもらおうか」

「やだなあ。なんで他人行儀なんだよ。いやあね、なんか面白いことになってるみたいだから」


懐から出した飴を孫次郎に渡しながらへらっと笑って勘右衛門は孫兵がさっき走っていった方を目で追った。ちょうど校舎の角を曲がっていった緑の忍服が校舎のかげに消えた瞬間勘右衛門が立ち上がった。膝に乗っていた孫次郎が落ちそうになって慌てて支える。

「おい!あぶねえだろ」

「ごめんごめん、でも伊賀崎君のが危ないみたい」

「は?」

「彼、何かに道を迷わされてるね。あのままだとじゅんこちゃんとは絶対会えないよ」

「…なに言って」



「「「あ、じゅんこだー!」」」


一年三人に寄ってきた蝮は確かにじゅんこでしきりにシューシュー鳴いているのが気にかかった。普段はもっと大人しい子だ。目の前でほらねと言わんばかりに眉をあげた勘右衛門が告げた言葉に急いで孫兵を追ったがその日、あいつを見つけることはできなかった。

「彼の影、頭から胸の辺りまで喰われてたから早く見つけてあげないと、ヤバイよ」



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