山田利吉
やっと生まれた
私自身は覚えていないのだけど、父上に聞いた話。
私を授かる前、母は二回の流産を経験した。
一回目の子、二回目の子、そして三回目の子である私の時まで、同じ月に臨月で驚いたそうだ。
水子供養はしていたのだけれど、なんだか縁起が悪いと、そう言って気丈な母が泣くこともあったらしい。二回も子を流してしまったとなれば、その気持ちは察するに及ばない。
そうしてやっと無事に生まれた私を両親は大いに喜び、可愛がってくれた。
しかし私が五つになるかならないかの頃、突然言ったそうだ。
「僕、母上のお腹の中に三回入ったんですよ」