蛇の毒白]U



レボルトはがくがくと、口からよだれをだらしなく零しながら、力なく崩れ落ちるイヴを、自身の胸に抱き寄せた。

「れ、ぼると」

艶やかな吐息を漏らし微睡みの中でもレボルトの名を呼ぶ少女に、レボルトはイヴの肩を抱く腕に力を込める。

「……好き」

中に未だ埋め込めれたままのレボルトが、ドッと熱を増す。
それを感じ取ってか、イヴの口元には幸福な笑みが浮かんでいた。
足の間から白濁を垂れ流し、艶やかに微笑み、レボルトを誘う。
首に回した腕に力を込め、膝立ちになる。

「すき、なの」

ぽたりぽたりと滴り落ちる白濁を気にも留めず、それどころかうっとりと目を細める少女は、どこからどう見ても正気ではなかった。

えい、と胎内に怒張を埋め込んだまま、イヴはレボルトを押し倒した。
男の上に馬乗りになり、細身ながらも鍛えられた胸の上に両手を付き、甘やかな息を吐く。

驚きはすれども、レボルトはそれを咎めはしなかった。
少女により落とされる口付けの雨をただ甘受し、笑みを浮かべ、黙って少女の動向を見守った。

「レボルト、私の、レボ、ルト。私の、私の、レボルト。私だけの、私のもの、私の……」

不気味に微笑みながら、少女はゆっくりと腰を前後に動かし出す。
心地の良い狂気がレボルトの心をドロドロと溶かしていく。
縋り追いかけ懇願する側だった自分が、逆に求められている。
ゆるゆるとした前後運動だけを続けるイヴは、先程の仕返しのつもりなのか、それ以上動こうとはしない。
不敵に笑って、レボルトの身体に抱きつき、腰を高く上げやんわりと動くだけだ。

「レボルト、は、ぁっ……ん……、わたひに……っ、ん、ど、して、ほし……?」

「……そう、ですね」

豊満な胸を押し付け、恥ずかしそうに上目遣いでレボルトを見詰める少女に、酷く興奮を覚えた。
少女の髪を撫でながら、レボルトは穏やかに微笑む。

「どうぞ、イヴ様のお好きなように」

イヴが動きたいのなら動けばいいし、このままでいたいというなら、それはそれでいい。
狂おしい程の好意を寄せる相手に求められるというのは、こんなにも心地の良いものなのかと、とっくの昔に狂気の沼に沈んだ男は、緩んだ頬を隠そうとしない。

だが、満足しているのはレボルトの方だけらしく、男の回答に、イヴは不満気に頬を膨らませ、のそりと身体を起こした。

「……ばか」

頬を膨らませ、真っ赤な顔でレボルトを罵る。
ただただ可愛らしいだけのそれに、レボルトの嗜虐心が増幅させられた。

少女の腰を逃げられないようにがっちりと掴み、レボルトは下からイヴを数度突き上げる。
その度、イヴは逃れようと腰を浮かそうとするのだが、レボルトはそれを許さなかった。
ぬちゃぬちゃという卑猥な音が鼓膜を犯し、優勢に立っていた筈のイヴは、何時の間にか、レボルトにいいように弄ばれていた。

か細い嬌声を上げ、豊満な胸を上下に揺らし、男の腹に腕を付き、イヴは上気した顔で快楽に耐えていた。
目に涙を浮かべ、時折不満気にレボルトを見下す少女に、ますます頬はにやけていく。

「イヴ様」

体を起こし、胡座をかき、イヴを自身の腕の中に閉じ込め、向き合う形となり、レボルトは律動を続けた。
閉じられた瞼の上に柔らかく口付けを落とし、抑えきれなくなった愛の言葉を雨のように浴びせていく。

「……俺も、イヴ様の事が好きですよ」

本当に、胸焼けがしそうなほどに甘い。
必死に首にしがみつき、レボルトに蹂躙されていた少女は、よっぽど顔を見られたくないのか、耳まで赤く染め、レボルトの肩に額を押し当てたまま動かなくなった。
首の後ろに回された腕が、一層力を増した気がした。

「好きです」

がら空きの耳に直接息を吹きかけた瞬間、腕の中のイヴが小さく震え上がった。

「ぁ……っ、に……ぅ……」

イヴがそろりそろりと顔を上げる。

「好きですよ」

恐る恐る見たレボルトの顔は、心底愛おしいものを見る、今まで見たどんなものよりも穏やかな表情だった。

「……わ、私の方が、好き、だもん」

どんな言葉よりも、破壊力があった。
頬を膨らませ、苦し紛れに目を逸らし、不服気に呟く。
たったそれだけの所作で、レボルトは二度目の限界を迎えた。

「ぁ……」

小さく声を上げ、イヴの体が打ち震える。
びくんびくんと数度軽い痙攣を繰り返し、力なくレボルトの胸に倒れ込んできた。
許容量を超えた白濁が、イヴの脚を伝い、ぽたりぽたりと零れ落ちる。
酷く淫猥な光景に、またしても昂りそうになる熱を必死に押し留め、そろそろ限界だろうと、レボルトは少女の中から己を引き抜こうとした。

それを押し留めたのは、他ならぬイヴ自身だった。

「ぁ……や、だ」

レボルトの体に脚を絡ませ、決して離れようとはしない。
目を固く瞑り、必死に縋り付く少女の肩を、半ば同情に近い気持ちで数度撫でさする。

「やだ、や、だ……っ、レボ、ルト……っ」

かつて、晴れた日の海のように澄み渡っていた瞳は、今は酷く濁り、あからさまな劣情を抱えていた。
レボルトに負けず劣らずの狂気をその瞳に秘めた少女は、荒い息を吐き、自らレボルトの上で腰をふる。

淀んだ笑みを浮かべながら、レボルトの全てをその身に受け入れようと、己から引き抜かれようとしたものに手を添え、再び埋めようとする。

普通なら恐怖するだろう、正気の沙汰ではない行い。
だが、レボルトとて、とっくに、おかしくなっている。

「おいで」

俺だけが堕ちるのは不公平だ。
だって、そうだろう。
先に好きだと言ったのはそっちの方だ、どうして俺だけがこんなに溺れているんだ。
もっと、もっと深い場所へ。

足りない。まだ足りない。
どれだけ貪っても足りない。

少女の誘いを艶やかな笑みで受け入れ、奥へ奥へと沈み込んでいく。

ゆっくりと体を揺さぶられる度、甘やかな息を漏らし、イヴは笑う。虚ろな笑みを浮かべたまま、レボルトをうわ言のように呼び、その身に縋る。
肩にそっと口付けを落とし、レボルトは甘やかな呼び声に酔いしれていた。

「レボル、ト、ぁ……、レボルト……っ」

よしよしと首に縋り付く少女の背をさすり、レボルトはゆるやかに律動を続ける。
夢と現実の狭間を彷徨う少女は、ただ本能のまま、何も考えずに言葉を発する装置と化していた。

「約束、した、から……ね」

柔らかな髪に指を通す。
気持ちよさげにゆっくりと閉ざされていく瞼に微笑めば、穏やかな時間はゆっくりと進んでいく。

「絶対、いなくなったり、しない、でね」

「はい」

「私を、一人にしないで」

「イヴ様が、それを望むなら」

「そっか……んっ」

額に口付けを落とすと、安心感からなのか、イヴは唐突にレボルトに全体重を預けてきた。

「イヴ様」

「ん……」

「イヴ様には、俺しかいないんですよ」

微睡みの中を彷徨う真っ白な少女に、半ば洗脳のようにして、汚らしい泥を流し込んでいく。
ゆるやかに抽送を続けながら、レボルトはイヴを繋ぎとめようと必死だった。

「貴女の存在を知っているのも、愛して差し上げられるのも、こうして、抱きしめてやれるのも、俺しかいないんです」

「ん……」

「俺の全てを貴女に」

だから。
貴女の全てを俺にくれませんか。

耳元から響いた、掠れたレボルトの声に肯定を示すかのように、少女の中が唐突にきつく締まる。
ドロドロと泥沼に沈み込んでいく。
底なし沼に二人して沈んだまま、ろくな抵抗もせずに、むしろ本望だと、頭の先まで飲み込まれていく。

再度少女の中に精を注ぎ込み、レボルトは熱い息を吐いた。
だらんと力なく自身に体を預けているイヴを両手でしっかりと抱きとめながら、レボルトは慎重に埋め込めれていた楔を引き抜いていった。

瞬間、栓を失った秘所から、飲み込みきれなかったのだろう白濁がごぽりという音を立て、少女の足を伝い、流れ落ちた。
それだけで、一度は収まった昂りが、再度熱を増していこうとする。
必死に熱を押し留め、レボルトはイヴをそっとベッドに横たえさせた。

丸一日以上の時間を掛け、雌の身体を蹂躙し続ける蛇の雄にとっては、到底、この程度で足りる訳がない。
だが、これ以上はまずい。
ここまで来て腹上死は、さすがにシャレにならない。

すうすうと獣の側で穏やかな寝息を立て、子供のように眠る少女の横顔は、初めて会った日の無垢な幼子の面影をはっきりと残していた。


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